ループ ザ ループ。

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「音漏れ参戦」を受けて考えたこと


V6の20周年イヤーを締めくくるアニバーサリーツアー最終日公演の様子がWOWOWにて放送された。

とても感動的な最終日だったのだが、この時物議を醸したのが「音漏れ参戦」について。

 

www.j-cast.com

 

会場の外に集まった約1万人のファン。

コンサートが始まりしばらくして、なんと会場の扉が開け放たれた。そして集まっていたファンを入り口近くに誘導。

音量を上げ、ファンは座ってペンライトを振る。もちろん音声のみしか聞こえていないので中の様子はわからない。

一方会場内ではモニターに外で音漏れを聞いているファンが映しだされ、メンバーも「外のみんなー!」と呼びかけた。

 

はっきり言っておく。

こんなこと普通は許されない。

 

神対応だ。確かに。

 

でもこれが特例であるということを知っておかなければ、私たちは今後おそらく運営側に大変な迷惑をかけることになる。

 

運営側が、良い意味でも悪い意味でも話題になる、話題になってしまうことを予想しなかったわけがない。

それを承知でこういった措置を取ってくれたことを、ファンは一体どう受け取るか。そしてそれをどう返していくのか。

 

今後

「あのコンサートは最高だった!」

と語り草になるのか、

「あのコンサートのせいでどんどんマナーが悪くなっていった」

となるのか。それは私たちにかかっている。

 

 

 

音漏れ参戦がなぜいけないのか?

そもそもなぜダメなのか?

もしこれが1人や2人だったらそこまでの騒ぎにはならないだろう。

 

もちろんコンサート自体が「本来なら有料チケットを購入した人間のみが参加できるもの」であって、それを無料で聴くのがマナー違反に当たる、というのは前提としてある。

 

だが実際問題、会場によっては近くにいるだけで音漏れが自然と聞こえてくる場所もある。スタジアムやドームクラスになるとなおさら。

天井がない、屋外の会場になると丸聞こえと言っても良い。

 

私は以前、聴きたくない音漏れが聴こえてきて避難したことがある。

開演前にグッズを買い、会場の周りにいたらリハーサルの音が聴こえてきたのだ。セットリストのネタバレを回避するために慌てて逃げた。 

会場周りでも聞こえやすい場所と聞こえにくい場所があるのだが、こういった感じで自然と耳に入ってくるレベルの音漏れがあったりする現実もある。

 

だがこれを求めてそこに何千、何万人の人が集まったらどうなるか。

想像できるだろう。

そしてその事態を、会場側がどう見るか。それも想像できると思う。

 

集まるか集まらないか、で言えば圧倒的に集まらないほうがいいに決まっている。仕事としてコンサートに関わっている方からすれば手間はかからないにこしたことはない。

この時点で音漏れ参戦は迷惑をかけている。

 

 

一般人から見た「◯◯のファン」

また、人が集まればそれだけで周辺の人間に迷惑をかける。

 

仕事としてそのコンサートに関わっている人だけではなく、その場に居合わせたなんら関係のない一般の方、近隣住民の方など。

 

私は常々思っているのだがコンサート後の駅の混雑。あれが毎回申し訳ない。仕方がないことでどうしようもないのだが申し訳ない。

 

仕事帰りで疲れている方も電車には大勢乗っているだろう。スーツの方など見ると私はもう申し訳なさの塊と化す。

疲れて帰宅する最中にコンサート帰りの浮き足だった連中が大挙して押し寄せる、そのしんどさったら無いと思う。

 

私はいつも想像するのだ。

仕事が終わり、「ああ、疲れた…」と電車に乗る。今日も1日頑張ったな、早く帰ってゆっくりしよう…とイスに腰掛け、やっと一息つく。そして途中の駅でコンサート後で浮き足だったおびただしい数の人間が乗ってくるわけだ。

ごめんなさい、である。

 

となると絶対に「誰のコンサートがあったんだ今日は?!」と思われるだろう。それはグッズやファンの服装を見れば大体把握できる。

そこでそのファンがどう見られるか、これって案外大事だと私は思っている。

 

その時、その面識もない一般の方からすれば、私たちは「◯◯のファン」以外の何者でもない。 

 

「◯◯のファン」としての行動が迷惑をかけるのは最終的に一体誰になるのか。 

それはファンとして動く以上、常に頭の片隅に置いておかなければいけない。リアルの世界でも、ネットの世界でも。

 

あなたが起こしたその問題行動で批判されるのは、「あなた」でありさらにその大好きな「◯◯」になってしまう、ということを理解してほしい。

 

 

少し強めに書いたがこれは逆の意味でも作用する。

マイナスばかりではない。しっかり行動すればプラスにも働くのだ。

 

今回のV6の音漏れ騒動は比較的プラスに働いた。

もし、「音漏れ組が外で大声で騒ぎまくった」だとか「踊り狂った」だとか、そういう事態になっていれば一斉に「V6ファン最悪」という内容で広まっていただろう。

そして運営側も今以上に叩かれていたはずだ。

 

そうならなかったのは、外できれいに整列しペンライトを振っていたという音漏れ組の行動の結果とも言える。

 

 

聴きやすくしてくれた、裏側の気持ち

私には想像するしかできないが、「音漏れを許す行為」がそんなに簡単に実現できたとは思えない。

 

「開けちゃえー!」というその場のノリで会場の扉が開くとは思えないし、ましてや天下の「ジャニーズアイドル」だ。

破天荒なロックバンドであったり、思いもよらない奇行で客を集めるタイプのアーティストではない。

 

メンバーとしてはおそらく「外に集まってくれたファンも一緒に20周年を祝いたい」という気持ちが強かったはずだ。

 

コンサートが始まる数時間前に会場前で行われた会見には約2万人が集まった。公演中にも多数のファンが集まってしまうのは十分予想できる。

だったら音漏れを聴くファンにも聴こえやすいように配慮しよう。

そこに考えが及ぶのもわかる。

 

だが、聴かせることで今後どうなるのかをスタッフ含め誰も想像しなかったわけがない。

前代未聞のその対応が話題になるのは当然だ。

でもそれが「V6の20周年イヤーを盛り上げる」ような話題になるのか、「V6の20周年イヤーの最後に泥を塗る」結果になるのか。

あらゆる要素から推測してもそればかりは蓋を開けなくてはわからない。

 

最終的にはファンを信じるしかない。

「大丈夫だろう」と思ってくれなければこの一連の動きはなかったはずだ。

 

はっきり言ってしまえば、「外のファンをそのままにしておくと迷惑なので片付ける」という意味でただ整列させることも可能だったと思うのだ。

トラブルに対処するのは仕事の一環。

 

ただ、今回は「片付けた」だけではない。

「会場の扉を開け、音量を上げ、より聴きやすく」。

 

この行為が意味するところを考えると胸が熱くなる。

決してトラブルを処理するだけの単純作業ではない。

 

邪険にせず、マナー違反の行為を行っているファンにこれだけ誠意を持って対応してくれた。これがどれだけ凄いことか。

 

 

「音漏れ参戦が解禁になった」わけではない

私がとにかく言いたいのは

「今後毎回同じことが許されるとは思ってはいけない」ということ。

あくまで特例。特例中の特例だ。

 

「20周年当日」という記念すべき日だったこと。

大丈夫だろう、と信頼してゴーサインを出してもらえるくらいのマナーをこれまで守ってきていたこと。

 

代々木体育館の立地も良かったのだろう。

住宅に接していなかったこと、大きな苦情を寄せるような企業もなかったこと。

(余談にはなるがライブハウスやドームなどで観客がジャンプすると震度3程度の揺れが起こる場合もあり、苦情が寄せられ問題になった例もある。ジャニーズコンサートはジャンプする機会は他アーティストに比べれば少ないが、このあたりも気をつけたほうがいい)

 

もし大問題が発生していたら、聖地でもある代々木第一体育館を今後コンサート会場として使えなくなる可能性もゼロではなかったはずだ。

ジャニーズという大手の枠組みの中に位置しているので多少無茶をしても「干される」ことはないとは思うのだが、その可能性は決してゼロではない。

 

それは全国どの会場にも言えることであって「会場側に損害を与えてしまう」行為は結果的に私たちの首を絞めることになる。

「楽しめる場所」を減らす結果になったとしても文句は言えない。 

くれぐれも「あの時オッケーだったから毎回オッケー」だと軽く思ってはいけない。

 

またあの日、きちんとマナーを守ることを優先し会場に行けたのに行かなかった人もいる、ということも知っておかなければならない。

結果的にあのようなサプライズが行われたため「音漏れを聴きに行ってて良かった!」という風潮が目立ってしまってはいるが、一般的に見れば行かなかった方のほうが正しい。

この話題が広まれば広まるほど、正しい行為をした方々はモヤモヤするはずだ。

 

正直その気持ちもわかるし、でも集まってしまった方の気持ちもわかるし、聴かせてあげるべく配慮してくれた運営側の気持ちもありがたいし、それを見て批判する方の気持ちもそれぞれわかる。

 

何が正しくて何が間違っているのだろう。

 

おそらくどれもその人なりの「正しい」に沿った考えであって、その定義があやふやだからこそこんなにモヤモヤしてしまうのではないか。

世間一般的なルールにのっとり、その正しさを主張することは簡単だ。正論を振りかざして頭ごなしに否定することは誰にだってできる。

 

でも感情については、考えれば考えるほど全てを肯定することも否定することもできない。それに対して白黒つけるというのは非常に難しく、私は結論が出せずにいる。

 

感情は時にどんなルールも追い越してしまう。そんな瞬間は誰にだってある。

こんなフレーズどこかで聞いたなあと思ったら、それを歌っていたのは他でもないV6だった。

 

 

「美談」として広まったのはなぜか

結果的にV6が行った「音漏れ許可」にあたる行為は「美談」として広まっているのではないか。

もちろん批判だって少なくはない。後日Yahoo!のトップにも上がっていたし、この話題はかなり多くの方に広まることとなった。

だが一番避けたかったであろう大幅なイメージダウンには繋がらなかったし、むしろ「美談」とされている部分も大きい。

 

それはおそらく「20周年まで積み重ねてきた彼らのイメージ」が成したものによるところが大きいと思う。

また、この件に合わせて「V6がこれ以外にも行った神対応」が並べられたこともある。

 

今回のツアーでは、20年前からファンクラブに入会している方は必ずどこかの会場でチケットが取れるように配慮されたそうだ。

複数公演申し込んだにも関わらず全滅した人も目立つ中で、昔からずっとついてきてくれたファンに対してはそのような措置が取られていた。

手間をかけてまでデビュー時からのファンを拾いあげる。この措置に対して、まったくぐうの音も出ない。感動した。

 

代々木公演にて設置される恒例の花道「Vロード」も今回はなかった。

設置される花道も細くした。

少しでも多くの人が会場に入れるように、という配慮からだ。

 

そこまでしてさらに当日には音漏れ参戦を許可するような配慮までした。

だからこそ、単純な考えで浅はかに「ルール違反」をしたのではないのだということも汲める。

こういった姿勢が見られたからこそ「今回だけ」のこの行為を「美談」とみなしてくれる方が多いのではないだろうか。

 

 

20年活動してきてV6は世間にどう見られているのだろう。

「V6が音漏れ参戦を許可した」

この文面は、果たして世間にどう届いたのだろう?

 

その答えが、かろうじて「美談>批判」となっているこの現状であると私は思うのだ。

 

批判を受けてしまうような行為だったということ、落ち度があったということも忘れてはいけない。

でも確かにそこに美談として伝えたくなるような一面もあったのだということも、しっかり覚えておきたい。

 

  

あの「神対応」がどういう意味を持つのか。

 

私たちはそれを確かに受け取った。

当日音漏れを聴きに集まっていた人だけではない。全国にいるファンが、その神対応を確かに受け取ったはずだ。

 

そこに感じた確かな誠意を、私たちは今後どうやって返していこうか。

 

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