何かと暗いニュースも多く沈みがちな今日この頃、ここらで少しおふざけ交じりにドラマ感想でも書いて1人盛り上がってみたいと思う。ふざけ交じりといっても決してけなしているわけではない。ツッコミながら大いに楽しんでいる、そんな姿勢をつらつらと綴ってみたい。
要するに「『せいせいするほど、愛してる』超おもしろくない?」というお話である。
タッキーのエアギター
1話で世間を騒然とさせたのはやはりあのシーンである。
滝沢秀明氏演じる三好海里副社長の、突然のエアギターだ。
見たことがない方にお伝えしたいのは、彼のエアギターはただのエアギターではない。
その場でさもギターがあるかのように構えてひたすらにジャカジャカやるタイプのものではなく、家中を徘徊しながら家具や設備・備品さえ巧みに扱いながら行う。
あれを果たして単にエアギターと片付けていいのだろうか。新たなパフォーマンスの一種ではないのかとさえ思えてくる。
1話を見たあとで読んだ公式サイトのインタビューでは、演じるご本人よりこのように語られている。
ぼくもびっくりの設定で、趣味がエアギターなんです(笑)。副社長という立場はやはり息苦しいのか、それを発散させているんでしょう。未亜の一人カラオケと対になって毎回出てくるらしいです(笑)。
とりあえずこの情報、相当大事だと思う。
趣味か、そうか趣味なのか、そうかそれなら納得…
と、簡単に納得できるようなエアギターではないというのが本音である。
が、知らずに見るより全然いい。
趣味なのだ。あれは趣味なのだ。誰がなんと言おうと趣味なのだ。趣味と思おう。
またこのタッキーのエアギターと対になって出てくるのが武井咲さん演じる栗原未亜の1人カラオケシーンだ。
個人的には、「対」という表現よりも「クロスする」という言葉のほうが近いように思う。
2人ともそれぞれに負の感情を抱え込み、その持て余した感情を何かをすることで発散する。その手段が海里にとってはエアギターであり未亜にとっては1人カラオケなのだ。
視聴者にとってももどかしさが募るころ突然に、颯爽と登場したのがこのシーンである。
「颯爽に」という表現は合っていないような気もするのだが、予備知識もないところに放り込まれたこのシーンが駆け抜けていくスピード感はまさしく颯爽としていた。
青天の霹靂以外のなにものでもない。
今のは幻か?我々は夏の暑さに幻を見たのか?
そう思わせられるのは、あんなにハードなエアギター&1人カラオケシーンを挟み込んでおきながらもいたって平然と進んで行く本編のせいでもあろう。
1話の場合。
カラオケで1人、曲を入力しマイクにかかっているカバーを外す未亜。
一方その頃、自室でハードな音楽を流し始めると同時にエアギターの姿勢に入る副社長、いきなりの膝をつきながらの熱演である。
目が点になる私。
息つく間もなく画面は切り替わり、今度は未亜の歌唱パート。拳を突き上げながら、しまいにはクルクル回りながらの「リンッッダ、リンッダァーー♪」。THE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」を熱唱していた。
またも混乱する私。
上手いのか下手なのか、いや上手いとは言い難い、だが調子は合っている。なんだこのクセになる歌唱は。どう対処すればいい。
対処しきれていない間にまたも画面は切り替わり部屋をエアギター状態で徘徊する副社長。オイその状態でどこ行くねや。
一方未亜はAメロに突入、大盛り上がりである。1人で。
その頃ダイニングキッチンへ突入した副社長、部屋の照明のスイッチをオン。もちろん音楽に合わせながら。両手、いや両腕を大きく使いながらダイナミックな動きでスイッチを入れるその華麗な様、もはやパフォーマンス。
そんなダイナミックスイッチオンを終えた副社長はキッチン部へ移動。もちろんエアギターを弾きながらの歩行。からのキッチン上の照明もオン。
いや、いる?今いる?そこいる?料理前なん?今から料理するとこやったん?いやめっちゃエアギター弾いてるやん今そこの電気いる?もう脳内ツッコミがとまらない。
そしてまたも切り替わり未亜歌唱パート。そろそろ副社長パートに押されてきた。
未亜のリンダリンダはあくまでサビ部分のインパクトが大きいので、その他の部分は普通にかわいいノリノリ系女子なのだ。
がんばれ未亜。このままでは負けてしまう。早く来いサビ!別にはっちゃけ度で争うシーンではないのだがそろそろ感覚がおかしくなってきた。
画面は切り替わり副社長はいよいよテーブルに腰掛ける。それ子供がやったら絶対親に怒られるヤツ。
テーブルに腰掛けながらのエアギター。感情込めまくりの表情、なんなら仰け反りながらの演奏(といっていいのか)。そしてそこから、足で勢いをつけてテーブルの上で尻を軸にしてターン。
それを受けた当時の私の感想はこうだった。
@ltl_6 ターンした瞬間の私の心の叫び「ただものでは!!!ない!!!!」
— はま (@ltl_6) 2016年7月12日
常人はあんな綺麗にテーブルの上で回れませんて…あれはもう長年に渡る努力の上にようやく成り立つ、お金が発生するタイプのターンやで…
尻中心のターン、についてもう少し説明するならば「体育座りから足を浮かせた状態でのターン」といったところか。
とにかくただものではなかったのだ。
私は爆笑した。必ず、かの爆笑不可避の芸をツッコまねばならぬと決意した。
話を戻して、尻中心にターンしたあとの彼はテーブルに仰向けになりなおもエアギターはやめないのだ。まだやるか。
そして未亜も負けていない。再びのサビ、「リンッッダ、リンッダァーー♪」の襲来だ。
副社長は仰向けになっていたかと思いきやもう立ち上がりまたも片膝をつきながらの爆演中だ。
なんて忙しい切り替わりだ…とヘトヘトになり始めた頃、そんな風変わりなことをしている2人の映像がスローにされる。そしてハードな曲でもなければ「リンッッダ、リンッダァーー♪」でもない、しっとりとしたBGMが流れ始めるのだ。
するとさっきまで大混乱させられていたのに急に「この人たち、なんかすげえいろんな感情を抱えながらこんなにはっちゃけることでそれを浄化してるのかもしんねえな…」感が漂い始めるのだ。
そうしてあんなに混沌としていたのに、あの勢いはどこへ行ったのかというくらいにスン…とした空気に切り替わる。
そうして訪れた感情が、今のは幻か?だ。
そこまでの一連の流れが私にとっては非常にツボで、「今のなんやったん?」と呆然とさせられながらもニヤニヤしてしまうこの感じは大好物の類だ。
そんなわけでこのエアギターと1人カラオケのシーンは毎度のように登場し、本当にせいせいするほど大爆笑してしまいそうになる大部分と、「なんだか大変なんだな…2人とも…」とさっきまでの激情をうやむやにされつつなんだかセンチメンタルな気分に半ば無理やりにでも持って行かれてしまうというかなり強引なラスト、という調子で構成されている。
私などという人間はそれはもう笑ってしまう。笑ってしまいながら、果たしてこれは笑うのが正解なのか、このシーンで大爆笑してしまうのはこのドラマを作っている側からすれば失敗なのだろうか?だとしたら申し訳ないなあ…なんて思っていた。一応それなりにリスペクト精神は持って臨んでいるのだ。これでも。
ある回では、未亜が副社長にいろいろと質問をした。
「好きな音楽はなんですか?」の問いに「ハードロック」と答える副社長。
うん、せやな。
続いての質問「じゃあ趣味は?お休みの日とか何してるんですか?」に対する答えが「それは、言えないな…」だったのには噴いた。エアギターという趣味をさらっと隠す副社長。
楽しそうに「えーなんでですかー怪しい〜(笑)」とからかう未亜。ああ言いたい、彼の趣味はエアギターだと教えてあげたい。
エアギターしていないシーンでさえこういったふうにエアギター要素を含ませてくるのだから困る。これ以上笑わしてどうするのか、このドラマは恋愛ものではなかったのか。コメディなのか。
そんな中、副社長…いや、滝沢さんのラジオでエアギターシーンについて言及があったと知る。
メール「『せいせいするほど、愛してる』で、キュンキュンさせてもらっています(中略)エアギターのシーンは笑ってもいいんでしょうか、どう見ていいのか、ぜひ教えてください。」
滝沢「『エアギターのシーンは笑ってもいいんでしょうか』、いや、笑う以外に何がある……?むしろ(笑)」
(「タッキーの滝沢電波城」2016年8月13日放送分)
いやええんかい。笑っていいんかい。シリアスシーンの延長じゃなかったんかい。
拍子抜けも拍子抜けである。
だがこれで公に爆笑しながら見ても良いというおふれが出たということだ。これからはあのシーンを見ながら手を叩いて大爆笑してもいいのだ。我々は自由を得たのだ。
笑ってもいいと学んだ私はこのおふれが出た後、笑う気満々でドラマの視聴に臨んだ。
が、演者が「笑ってもいい」と言っていたにもかかわらず「…いや、ここで爆笑してしまったらこの後のせつない展開に支障でるわ!!」と我に返った。
笑ってはいけないのかな…?という状態なら爆笑し、笑ってもいいよと言われればいや、あかんのでは…?と冷静になる。我ながらめんどくさいヤツである。
そんなことを考えていたら、今週放送の第7話では未亜にバレた。
何がバレたかといえばもちろんエアギターがバレた。
今回も部屋でエアギターに興じる副社長。一方未亜は彼の手紙を読み、彼のもとへと急ぐ。
合鍵で副社長宅に侵入した未亜。
そのカメラワークはもうここまで散々彼の「エアギターという密かな趣味」を存分に把握した視聴者を煽るようなものにしか思えず、我々の心はもう「あぶない副社長!」「やばい!」「あーあー!」といったものでこの先の展開に大いに期待しながらその時を見守る。私の心境はというと半ニヤニヤ、半そわそわくらいの気持ちだ。
先週界隈をざわつかせた「華麗に絨毯をばさっと翻したのち部屋中に掃除機をかけるエアギター」以上にノリノリであり、今週の彼のブームは謎の指差しである。
誰に向けてのファンサービスなのか。もはや彼の心は超満員のドームにでもあるのではないか。
しかも驚くなかれ、そんな度肝を抜かれるエアギタープレイにかぶせられるのはいつも以上に長めのしっとりしたBGM、そして彼が未亜への想いを綴った手紙の読み上げ(もちろん副社長ボイス)。
そして脳裏をよぎる滝沢さんのラジオでのコメント。
滝沢「『エアギターのシーンは笑ってもいいんでしょうか』、いや、笑う以外に何がある……?むしろ(笑)」
いやここ笑ったら絶対ストーリーの展開上のちのち支障きたすよ。
「心はずっと…栗原を思ってる。」
でも画面に映るのは、ノリノリすぎて体をのけぞらせながらのエアギターをかます姿。
どうしろと?これにどう反応しろと???
いつもならお互いがノリノリでエアギターや1人カラオケに興じるところがクロスされるこのシーン。
今週のエアギター×心を決めて彼の部屋を訪れる未亜という構図はスリリングすぎる。
ハードロックに合わせやっぱり部屋を移動しながらエアギターをする副社長。
を、ドアを開けて黙って見ている未亜。
見つかり方がいたたまれない。
早く!もう早く彼を止めてあげて!と思うも、未亜はまったく声をかけず副社長も見られていることに気付いていない。
夢中で仮想オーディエンスに指差しファンサービスを振りまく。
それはもう丁寧に、回転しながら各方向に。
そうしてぐるりと回ってきたところで未亜を指差してしまい、そこでようやく見られていたことに気付くのだ。そんな気付き方ある?
お互いに呆然とする中、彼は果たしてどう弁解するのかと思いきや冷静にオーディオのスイッチをオフ。そして放った言葉が、
「コーヒーでいいか?」
まさかの、なかったことにしようとした。
未亜「いや…あの…今の、なんですか?」
副社長「ん?なんのこと?」
本格的にしらばっくれた。
挙句に放った言葉が
「夢でも見たんじゃないか?」
いやもう、夢なんやとしたら私もそう思いたいです。いっそ夢であれ。
未亜「いやぁ〜衝撃的でした〜」
副社長「いいから!」
未亜「いやかっこよかったですよ!なんかこうやって指差してるとことか」
副社長「もうわかったから!!」
未亜「ははははは!(笑)」
未亜がエアギターにドン引きしないタイプの女子でよかったね…と心のそこから思ってしまったのは私だけだろうか。
ドラマはどんどんシリアス度が増していく。
ベタな修羅場も訪れている。
先週放送分のラストでは副社長の奥さんによる未亜へのセリフ、ドスの効いた「このドロボウ猫ッッッ!!!」が炸裂し、いかにもすぎるベタなセリフにゾクゾクしたのは私だけだろうか。
サブタイトルがなぜこんなにポップなのか。「絶体絶命泥棒ネコ」はひどい。
なお今週は先週以上にベタなセリフの応酬であった。たぶん来週もそうなりそうである。
甘々なシーンにもドロドロなシーンにも頻繁にベタなセリフが盛り込まれていて、ベタなセリフにニヤニヤする傾向のある私は非常に忙しい。
エセなのか自然なのか、コテコテ関西弁の魅力
エアギター&1人カラオケのシーンと共にわたしゴコロをくすぐるのが中村蒼さん演じる宮沢綾。JIMMY CHOOにお勤めの、明るいキャラクターが魅力的なイケメンである。
ドラマ内で繰り返される「ジミーチュウの宮沢さん」は語呂がたまらない。
紹介される時も「ジミーチュウの宮沢さん」。自ら名乗る時も「ジミーチュウの宮沢です」。
癖になるこの響きには、今夏の「声に出して読み上げたくなる語呂部門・第1位」を差し上げたい。
コテコテな、関西人からすると「コテコテすぎる」関西弁を巧みに使いこなしているのだがたまに違和感のあるところもあり、調べてみるとどうやらご本人は福岡県出身らしい。
関西人が普段からコテコテ関西弁を使っているかといえばもちろんそうではない場合が多い。…と、思っている。
そりゃあ抑揚をつけて言おうといえばそれなりにコテコテな大阪人を演じることもできる。あえて「わてらナニワの人間ですさかい」くらいにネタで言ったりするが、普段のしゃべりの中であそこまで抑揚がついているかといえば別である。
コテコテ関西弁キャラを見て逆に「ああコテコテで喋りたい!」という謎の衝動にかられることがある。関西にいながら、なぜかフィクションのキャラから関西弁を入荷しようとしている矛盾。
自然でありながら不自然でもあるこの関西弁が私にとってはクセになる響きで、果たして彼の関西弁は上手いのか、下手なのか。
評価を調べてみるとどちらの意見も見かけるので誰か根拠をもとに解明していただきたいところである。
このドラマの中で、実は私は副社長よりも「ジミーチュウの宮沢さん」のほうが好きだ。副社長かっこいいー!と思うためにドラマを見始めたはずなのだがすっかり「ジミーチュウの宮沢さん」派である。
彼は未亜のことを好いている。
でも未亜は副社長が好きで、彼には妻(離婚寸前までいっていたものの離婚届を出す直前に事故で記憶喪失になったので微妙なラインではあるが)がいるにもかかわらず、宮沢さんはガンガン関西弁で好きや!と言ってくるにもかかわらず、副社長の愛人のままでいる。
「ジミーチュウの宮沢さん」推しの私としては、思わず「宮沢さんにしておけばいいのに…!」と思ってしまうがそんな簡単にはいかないのだ。
曲がずるい
これはこのドラマを見ていて1番感じていることである。
一筋縄ではいかない「不倫」というかたちをメインに描いているこのドラマは、切ないシーンというかもどかしい展開ばかりである。
毎回のように好きだけどダメ、でもやっぱり好き!やっぱりダメ!が繰り返される。
そんな「切ない」という感情を毎回放り込んでくるこのドラマで主題歌として使われているのが松田聖子さんの「薔薇のように咲いて 桜のように散って」。
この曲の感想を一言で言うなら、「ずるい」だ。
音楽的に素晴らしい…だとかそんな大それた批評はまったくできないのだが、とにかくもうずるいのだ。
1話を通していろいろとツッコミどころで溢れているのだがいいシーンでこの曲が流れるだけでこのドラマのメインテーマはこれですよと引き戻されてしまう。
「ああそうだった、このドラマって恋愛ものだった」と私がかろうじて踏みとどまれているのはこの効果が意外と大きいのかもしれないなと思っている。
全然共感できないセリフだな、と思っていようが、先ほどまで登場人物たちが大爆笑をかっさらうような奇行に走っていようが、この曲が流れてくると「恋愛ドラマ」に引き戻されるのだ。ずるい、ずるすぎる。
このドラマのキャッチフレーズとして並べられている文言は、「これを不倫だと思いますか?それとも純愛だと思いますかー?」だ。
基本的に不倫否定派の私は純愛か…?と思いながら見ているのだが、この曲の説得力はすごい。ちなみに作詞・作曲・編曲はX JAPANのYOSHIKI氏である。
この曲が流れてくるだけで場面が一気に切なく感じるし、副社長と未亜の恋愛は純愛である、と納得させられてしまう。ずるい。
そんなわけでいよいよ物語も佳境に入ってきたこのドラマ、果たして最後はどうなるのか。もうエアギターは進化しないのか。
最終回まで大いに期待しながらニヤニヤしつつ見守ろうと思っている。