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しまなみロマンスポルノ'18感想レポ 〜ポルノグラフィティの"故郷への想い"と"根っこ"を感じた2日間〜


ポルノグラフィティ ソングス


ポルノグラフィティが初めて故郷・尾道で開催したライブ、”しまなみロマンスポルノ’18”に行ってきた。

2日間とも参加予定だったのだが、周知の通り2日目は会場周辺に大雨による避難勧告が発令され中止。本来であればその公演がWOWOWで生中継され全国の映画館でもライブビューイング上映されていたはずで、それも含めて中止になってしまったことが無念でならない。大規模かつ高クオリティで映像に残るはずだったその光景は、幻となってしまった。

 

終始悪天候に見舞われた2日間。幸い1日目の公演は雨の中決行され、参戦することができた。

そこには確かにあの場所でしか感じられないものがあった。

それをどうにか残しておきたくて、まだまだ複雑な気持ちはあるのだけれど心の整理をしながら文章にしてみようと思う。

 

目次

 

 

 

開催決定した3月、西日本豪雨が襲った7月上旬、収益全額寄付が決まった7月下旬。

「しまなみロマンスポルノ'18」が20周年イヤーのキックオフとして開催決定したのが今年3月。ちなみに一瞬ロマンポルノと見間違うタイトル「ロマン"ス"ポルノ」は、全国ツアーではない単発で行われるワンマンライブに毎度つけられるタイトルである。

 

広島市内ではなく彼らが生まれ育った因島も含まれる尾道市でのライブとなれば、本人たちはもとより参加するファンの気合いも十分だ。あっという間に周辺の宿泊施設は予約で埋まった。 開催が近づくにつれて少しずつ情報も出てきて、準備を進めている最中で起こったのが7月の西日本豪雨だった。

 

広島も被害は大きく、開催自体も協議された。被災からたった2ヶ月しか経っていないこのタイミング。決行・延期・中止とどれを選んでもおかしくないこの状況で発表されたのは、「収益の全てを寄付する」という形での開催だった。

延期・中止になっても全然受け止める気でいたのだけれど、いざこういった形での開催が決まると俄然嬉しくその選択が誇らしくも思えた。ライブに参加することで被災地支援になるのであればこんなに有難いことはない。

ライブを観ればチケット代が、グッズを買えばグッズ代が支援につながる。 現場に足を運ぶことが大好きな私にとってのこの無敵感をどう表現すればいいのだろう。

得、というと全くもって違う。実質タダ、というのもまた違う。

でも好きなものにお金を払い、素晴らしいものを観てほしいものを入手して、それでいて支援もできてしまうのだ。どう計算式を成り立たせればいいのか頭が混乱するが、とにもかくにもポルノグラフィティ側が下したのはそういったとんでもなく大きな規模の決断だった。

 

被災地支援と、地元とのコラボ。

開催前、ネットで先行販売されたライブグッズはすべて完売した。

災害を受けチケットの一般発売も含めてさまざまなスケジュールが少しずつズレ込んだため、発送できる量にも限りがあったとは思うのだが、それでもほとんどのグッズが先行販売開始からすぐに売り切れた。「先行販売終了」の文字がきれいに並んだ画面を見ていると、誰の、ともいえない"みんな"の本気を感じ、ふつふつとこみ上がるものがある。

 

また今回のライブは尾道市の協力をはじめ、たくさんの地元企業とのコラボが実現した。

◯オタフクソース

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しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~ レモンのお好みソース

見慣れたオタフクのあのマークの隣に並ぶ二人のイラスト。大興奮の感慨深さとなんともいえないシュールさが漂う。なお裏面のおすすめポイントのイラストもいろいろと面白い。お好み焼きを食べていてもマイクとギターは放さない。

 

◯まるか食品

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しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~ イカ天 瀬戸内れもん味

以前友人が美味しいからと大量買いしているのを見て存在を知ったイカ天。

尾道の企業なので今回の会場からも非常に近い。

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ついでにパッケージを使って説明させていただくとポルノグラフィティの出身地・因島は本土から橋を渡って向島、そこからさらに一つ橋を越えたところにある。
 

 

◯広島東洋カープ

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しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~ スカイジェットバルーン

ポルノの二人も大好きなカープとのコラボは以前にも実現しており、今回はスカイジェットバルーンという形で実現。

演出でも使うと予告されており「ハネウマライダー」のイントロで飛ばした…のだが、風船を膨らますことにあまりのブランクのあった私は指定されたタイミングで膨らませず。写真はその日の夜に翌日公演に向け特訓をした時のものである。準備は万全だった。

 

◯尾道市農業共同組合

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しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~ 因島のはっさくゼリー(5個セット)

JA公認で農作物と同等の並びで島代表となるポルノグラフィティ。

描かれているのははっさくゼリーのパッケージでおなじみのイラストなのだが、そのゆるさ故じっと見ていると「ポルノグラフィティって一体なんなんだ…?」という気持ちにもなってくる。

 

改めて写真と文章でまとめていて気づいたのだが、マイクとギターの登場率がすごい。これだけ続くとおもしろくなってきた。

わかってはいるしそりゃそうだとも思うのだが「マイクとギター持たせとけばそれっぽくなる」をひしひしと感じる。

 

◯八天堂

くりーむパンでおなじみ八天堂さんも創業は広島。

会場限定販売だったのだが購入できず終わってしまい写真には残せず。ロゴ入りのオリジナル保冷バッグに入れて販売された。

 

なおこれらのコラボ商品を含むライブグッズはインターネットで販売中なので、興味のある方はぜひ。

 

 

会場内にはこういった商品を含めライブグッズを販売するグッズエリアと、フードエリアが設けられていた。

出店は28企業。地元企業によるご当地グルメから全国チェーンのお店まで様々で、銀だこ・モスバーガー・かつやの合同店舗は収益全額寄付とのことだった。

 

中には晴一さんのお兄さんのお店(因島青果)も含まれていて、実際お兄さんと従兄弟さんが店先に立たれていたそうである。そんな距離感の近さで参加しちゃって大丈夫なんですか…!と心配になりもするのだが、こういう線引きのゆるさがちゃっかり実現できているところがまたほのぼのしていていいなと思う。

 

同エリア内では「カラオケ de ポルノ in しまなみ」も開催されていた。要するにポルノの曲しばりのカラオケ大会だ。

1公演2万人を動員し行われる有名アーティストのライブでありながら、音楽フェスというよりも俄然「地元のお祭り」のニュアンスがぐっと近くなる催しに、都会っ子とは言えない私の胸はどうにも高鳴ってしまう。

 

また、因島からは観光協会が出店しグッズ販売を行っていた。

こちらは因島のゆるキャラ・はっさくん。単調な顔つきは見つめているとどんどん可愛らしく見えてくる。

魔性のゆるさ。 いろいろとグッズも購入させていただいた。  

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ここでもまた「マイクとギターを持たせておけばそれっぽくなる」が炸裂していた。「ポルノグラフィティ」とはどこにも書いていない。だがもう、そうとしか見えない。仲良しでなかったら完全にアウトのやつだ。ボーカルはっさくん・ギターはっさくんとあらためて表記されているのがじわじわくる。

この写真はシールなのだが、「いんのしま」部分の色違いが3種類用意されており「どれにしますか?」と聞かれたのもたまらなかった。「そこ選べるんかい!!」「3種類も発注せんでも!」と瞬時に心の中でつっこみが浮かんだが、そこにわざわざ選択の余地を与えてくれる、このなんともゆるさが漂う心配り。

…こんなことを言ったら各方面からしばかれるかもしれないが、どこか垢抜けきらない朴訥としたところに、彼らが"田舎"と称する故郷の片鱗を見た気がして愛しさがわいた。

 

こういった具合にライブ会場には「地元開催」だから実現することが余すことなく詰め込まれていた。

 

「ここで開催すること」の意味が沁みた1日目

1日目の公演が始まりステージに立つ2人の姿を見て、私はこのライブの重要性が全然理解できていなかったんだな、と痛感した。わかっているつもりで並々ならぬ気合いとともに臨んだのだが、それをはるかにこえていたのだ。

今まで見たことがないくらい嬉しそうな表情は、一言で表現するのならば感無量だとか万感だとか、そういうものだろう。ただ、どれだけの言葉を尽くして説明しようが、表情が物語るあの感慨は伝わらないのではないかと思ってしまう。

 

故郷でライブをすることが彼らにとってどういうことなのか。

想いを言葉にして届けることが職業の彼らはその感動を素敵な言葉で的確に表現してくれるだろう。

それはきっとポルノの歴史に刻まれこれから先もずっと残っていくものになるけれど、あの日あの場所に居て感じることができたのは、理屈ではなく湧き上がり爆ぜるような喜びだった。

 

嬉しそうで嬉しそうで嬉しそうすぎて、いつのタイミングだったか晴一さんを見ると「ニッコニコ」と表現するにふさわしいほど破顔していた。あまりのニッコニコ具合に一周回って「…嘘なんじゃないか?」と思ってしまうほど。信じられないくらいのニッコニコだ。

昭仁さんはMC中に「予想以上」と表現し、「故郷と言われる場所でライブをやることが、こんなに楽しいんじゃね」と口にした。

「島を出てきた時は"島を捨ててきた"みたいなイメージで出たけど、地元の方々の"おかえり感"をもらうと、故郷ってたまらないね」と晴一さんが語っていたのも印象的だった。

 

ライブに参加する前ふと、「私はどういう立ち位置で参加するべきなのか?」と考えた。出身地でのライブというのは大抵「ただいまー!」「おかえりー!」なんてくだりがあったりする。

じゃあ、関西から広島にやってきた私は地元人でもないのにポルノグラフィティを「おかえりー!」と言って迎えるのだろうか?

それは果たしていかがなものだろう。地元開催と銘打っているからこそ、そこに安易に乗ってしまうのはあまりにも無粋な気がした。

 

そういった具合に私はごく自然に"ポルノグラフィティは地元に「おかえり」と迎えられる側"、つまりは"ゲスト側"だと思っていた。

ところが、MCで話し始めた2人はそうではなかった。

 

故郷を「どうよ?これが尾道です」と自慢げに紹介する姿は間違いなく地元人のニュアンスで、まちに対して他人ごとな空気は一切ない。地元を離れ故郷に錦を飾るべく帰ってきた、みたいな空気もない。ここ尾道の人間として全国各地から集まったファンを迎えいれる、いわば"ホスト側"にいた。

 

遠くから、全国から集まってきたファンには「遠かったじゃろう」「大変じゃったろう」と労いを。

近隣から来た人には「今日はわしらの故郷すごかろうって胸を張っていい日じゃ」と同士として声をかける。

すっかり聞き馴染みのある広島弁も、いつもより濃く感じた。

 

そこに"スターが地元に凱旋するのを見届ける"といったような距離感はなく、地元民と一緒になって故郷を「どうよ?!」と自慢しながら、遠くからおとずれた人を力一杯もてなす。

先にも書いた通りいろんな企業とのコラボが目にみえる形になって実現した今回のライブだが、心意気としては「尾道」という土地そのものとのコラボなのではないか。

「おかえり」と彼らを迎えるこの地にも、それを受け止めてしっかりと寄り添いながらこの地の代表としてステージに立っているような2人にも、ものすごく感動してしまった。

 

ライブの終盤で昭仁さんが語っていた「ほんまええとこじゃけ」「また来てやって」という言葉にお世辞のような色は全くなかった。

受け取り方によっては偉そうに聞こえてしまうかもしれない単語をよどみなく、しっかりと温度をこめ「愛する故郷だからね」と伝えるその言い方に、改めて「ああ、ここの人なんだな」と知る。すでに知っていたことなのに、今更胸にストンと落ちたような不思議な感覚だった。

 

話が少し外れるのだが、ポルノグラフィティは2009年に一度だけ東京ドームライブを実施している。ちょうど10周年を迎えた直後のことで、あの時も大きな感動を抱いた。

映像化されなかった大事なライブをどうにか記憶に繋ぎとめるべく私はそれをノートに綴っていて、デビュー20年目に入るこのタイミングで久々に読み返してみた。

 

彼らはあの大きな東京ドームのMCでも因島を話題にしていて、こんな具合の内容だったようだ。

「わしらの故郷は因島というところで、離れて17年になる。東京に移ってからは12年、長い時間がかかって今日はこんなところでギター弾いたりしよんよ。時間が経ってしまったけどワシらは東京に染まったわけじゃないで!広島の、因島の魂を忘れとらんつもりじゃ!!その証として、今から君らに広島弁で愛をささやくことだってできるで!」

「お前のこと、ぶち好きじゃけえ!」

「 客、沸く。すごいコーナーや…笑」というのが当時の私が綴っている率直な感想だ。9年後の私はそこに「確かに…」と返事をする。

上記は昭仁さんが囁いた愛の言葉で、次は晴一さんのターン。「映画の内容覚えてないわあ、お前ばっかり見とったけえ」…こんな感じで何度かターンを繰り返した後、歌われたのは歌詞が全て広島弁で書かれている「邪険にしないで」だった。

ポルノグラフィティ 邪険にしないで 歌詞 - 歌ネット

 

そういえば、この時も「夢があるなあ」と思ったのだった。

広島・因島から出てきたバンドがこんな大きな会場で5万人を前に故郷の魂を叫び、地元の方言で歌を歌う。愛を囁くのが果たしてイケていたのかはまあひとまず置いておいて。

大都会にでかでかと故郷をかかげる。

それってものすごくロマンチックではないか。

あれから9年、今回のしまなみロマンスポルノで抱いた感覚は、あの時東京ドームで感じた「夢があるなあ」と直結している気がする。

 

尾道という場所に行って見えたもの

尾道市・びんご運動公園は、遠征するにあたって決して便利な会場ではない。

ライブ会場は最寄り新尾道駅から車で15分・徒歩30分の山の上だ。

 

晴一さんは「新尾道駅いつもはすごい静かな駅なんよ」と言っていた。

事前に下調べをしている時に知ったのだが、新尾道駅の1日平均乗車人数は1,000人ほど。山陽新幹線の中ではワースト2位の利用者数である。(2017年度)<新尾道駅 - Wikipedia>

そういう事情を知りながら足を運んだため、新尾道駅がポルノファンでごった返している光景はなかなか感動ものだった。私がポルノグラフィティの身内だったらこの時点ですでに泣く。

 

また、ライブ終演後の時間帯に合わせ山陽本線・山陽新幹線で臨時便も運行された。

新幹線まで増便させてしまうポルノグラフィティ。ちょっとドヤ顔で自慢したくなる響きである。

  

駅からライブ会場まではシャトルバスが人を運ぶ。

その車内ではこのために収録したトークが流されていた。乗車して初めて知るサプライズでの歓迎。その発想がまず嬉しかったのだが、行き帰りで別の音声が用意されているという心遣いもまたグッときた。

ちなみに会場行きの際の音声は、ポルノグラフィティと進行をつとめる方が3人で「あ〜ちゃんです!のっちです!かしゆかです!3人合わせてPerfumeです!」と自己(?)紹介するところから始まった。

   

バスの車窓から見えるのは普段は穏やかな暮らしが営まれているであろう町並みだ。大挙して押し寄せお騒がせしているのがなんとなく申し訳ない気持ちになる。

しばらく流れる景色を眺めていると、藻だろうか、緑で埋め尽くされた池の中心に大きな鳥がデン!とこちらを向いて立ち尽くしているのを発見した。雨の中で微動だにせず立ち尽くす姿はなんともシュールで「何だあいつ…」と目が離せない。謎の鳥を通過している最中、"釣りをしないでください"という看板が視界に入ってきて、それがまた長閑な暮らしを彷彿とさせる。少し走ると景色は山を登る風景に変わった。

 

今回予定を組んでみて、普段遠征する機会も多い東京近郊の会場がいかに音楽イベント開催に適しているか、ということを改めて突きつけられたような気持ちになった。

それは会場の大きさだけではなく、宿泊施設でありアクセス環境であり、街そのもののキャパシティ。さらには経験に基づいてしっかりと構築されたシステム、そしてなによりそこに様々な形で関わる人の"慣れ"。

常々「なんで関東ばっかり…」と嘆きを抱えてしまいがちなのだが、スムーズに音楽イベントが開催される会場にはやっぱりそれなりに理由がある。

 

正直、今回のライブではいろいろな混乱も生じた。

雨の中での規制退場にはとんでもなく時間がかかり、体への負担もなかなかだった。

 

ポルノは何度も「集まってくれてありがとう」と、「大変だったじゃろう」と言ってくれたのだが、これだけの人数の動向を読み混乱のないように動線をつくろうと尽力してくれたスタッフの苦労を想像すると頭が爆発しそうになる。ライブに参加するだけの私ですら行ってみるまでわからない部分が大きく、この半年間はずっとどこかに「どうしよう…」があった。

 

1日目にうまく機能しなかったところをいかに翌日改善できるか。

運営側も協議を重ね改善をはかってくれたのだが、参加するこちらもうまくその動線に乗れるよう少し意識しながら臨むような空気の2日目だった。だからこそその半ばで中止が決定してしまったのは本当に悔しかった。

 

1日目のライブに感じたこと

開演前に場内に流れていたのは広島出身アーティストの方々の楽曲。今回のライブは本当にすべてが広島色だった。

*山本浩二さんによる開催宣言

開演と同時にモニターに流れたのはミスター赤ヘル・山本浩二さんによるしまなみロマンスポルノ'18開催宣言。 その嬉しさを、公演日の翌日に放送されたラジオの中で晴一さんなこんな風に語っていた。

「山本浩二よ?山本浩二が、開会宣言してくれるんよ。見てくれた方はわかると思うんですけど、ライブの前にしまなみロマンスポルノの開幕を宣言します!って言ってくれたんじゃけど。この山本浩二の凄さみたいなんが、まあどのジャンルでもそうだと思うけどやっぱこう若い世代とか知らんかったりするわけよ。広島に住んどる人は、まあ解説もやってらっしゃるし知ってる方も多いとは思うんですけど。ミスター赤ヘルよ。ジャイアンツでいう長嶋茂男、王貞治、でカープでいうとやっぱ山本浩二、衣笠祥雄。この二人が、もう今も強いしカープ女子とかで今人気がめっちゃあるけど、やっぱりいまだにカープで一番好きな最重要人物は誰かっつって投票したとしたら、やっぱ山本浩二になると思うね。

(中略)

あのー、リハーサルしてるスタジオに来てくれて収録させてもらったんじゃけど、それを。こんなことを言ってもらえたらあとはこの辺はフリートークみたいな感じで、みたいなのを、その収録見よったんじゃけど。もうだんだんこう……そこは結局使われんかったんじゃけど。大体使われた内容としては「20周年地元広島でやるんで駆けつけました」と、で「カープも野球で頑張ってる、ポルノは歌で、被災された方にエールを送る」みたいな。で、「頑張れよ!」みたいな感じだったんだけど、そのいくつか撮ったバージョンの中に「ポルノ20周年やれたのはみなさんのおかげです。ありがとうございます」とかって、山本浩二さんがお礼言ってくれるわけ。なんか、すごい嬉しくて(笑)。もう、ほんとに子供の頃のレジェンドってこういう人のことを…例えばイチローも大スターじゃし、もちろんお会いしたことないけどお会いしたら絶対嬉しいと思うけど、また子供の頃のスターって違うじゃん。こないだマエケンに会ってもめっっちゃ嬉しかったけど、またこう震えるような嬉しさとはまた違うじゃん。山本浩二さんに開会宣言をしてもらって、さらに呼び込んでもらうっていうね。もうこれだけでしまなみやった甲斐があるってことで(笑)。(歌い出す前ですけどね笑)そうそうそう(笑)。いやあ、この凄さが会場来た人みんなに伝わればいいのになあと思いましたね。

 (「カフェイン11」2018年9月10日放送)

収録はライブより前。この時の晴一さんは2日目が荒天中止になってしまうことを知るわけもなく、無事2公演終えた体で話しているのが切ない。

とはいえ山本浩二さんによる開幕宣言がどれだけ嬉しいことだったのかはその熱弁ぶりからも理解できた。 

 

開催宣言を受けステージに登場するポルノグラフィティ。ライブ1曲目は「キング&クイーン」から始まった。ど頭の歌詞がこれである。

壊さぬように 大切に 幼い頃の憧れを

胸に抱き続けた未来 今どの辺りにいるかな?

ポルノグラフィティ キング&クイーン 歌詞 - 歌ネット

この言葉からはじまっていく故郷ライブというだけで胸がいっぱいになるのだけれど、「少年時代から憧れている人からの開催宣言」は「夢が叶っている未来」をわかりやすく見せてくれた。1曲目を聴きながら、これだけでしまなみに来た甲斐がある、と思ってしまった。

 

*セットリスト

1.キング&クイーン

2.ワン・ウーマン・ショー〜甘い幻〜

3.瞬く星の下で

4.ワンモアタイム

5.アニマロッサ

6.ギフト

7.Winding Road

8.ROLL

9.愛が呼ぶほうへ

10.Mugen

11.サボテン

12.アポロ

13.ブレス

14.狼

15.Century Lovers

16.ミュージック・アワー

17.Aokage

18.そらいろ

19.ハネウマライダー

20.アゲハ蝶

21.ジレンマ

前半戦セトリは2017年リリースの「キング&クイーン」からシングル曲を3曲飛ばしで遡っていく形だった。年代を満遍なく網羅しながら1999年のデビュー曲「アポロ」までたどり着くと最新曲「ブレス」へ。

 

*今回のライブを象徴する「ブレス」

今回のライブのタイトルは「しまなみロマンスポルノ'18 〜Deep Breath〜」となっており、サブタイトルはこの「ブレス」にちなんでいる。

ブレス

ブレス

  • ポルノグラフィティ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

今夏のポケモン映画の主題歌にもなっていて、万人が受け取りやすいあたたかで優しい曲調。でもそこに乗せられた歌詞には少し皮肉もこめられている。

ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート

頼んでもないのにやたら背中を押す

簡単に重ねるんじゃない 君を 

すぐに変わってゆく ヒットチャートになんか

ポルノグラフィティ ブレス 歌詞 - 歌ネット

 

この歌詞に初めて触れた時、私の脳裏に浮かんだのは2000年発売の2ndシングル「ヒトリノ夜」だった。

 100万人のために歌われたラブソングなんかに

僕はカンタンに想いを重ねたりはしない 

ポルノグラフィティ ヒトリノ夜 歌詞 - 歌ネット

当時この歌詞に受けた衝撃をいまだに覚えている、というか、私のポルノ好きはそこからはじまっているといっても過言ではない。

 

アポロが発売した頃、その「ポルノグラフィティ」という人たちは広島の田舎のほうの島から出てきたニイちゃんらしい、ということを知った。

当時のイケイケな風貌を見て、子供ながらに「逆に田舎から出てきたからこそ派手にしてるんだろうな…」みたいなことをぼんやり思った。

言ってみれば、"穏やかな田舎に暮らすヤンキー、空気をぶち壊すために髪染めちゃう説"的な偏見だ。今思い返しても失礼が過ぎる。子供の頃からの私のひねくれ具合がよく出ている。

音楽番組で、当時金髪だった昭仁さんがハキハキすぎるほどハキハキしながら司会者と絡む様子に子供ながらに圧を感じ、それは「東京になめられまい」とする姿のように見えた。

 

ポルノグラフィティという存在をそんな風に認識しはじめたころにリリースされたのが「ヒトリノ夜」だった。

Aメロからいきなり、音楽をもってして音楽に啖呵を切るような皮肉めいた歌詞。

私にとってはしびれるかっこよさだった。これもまたひねくれ者ゆえかもしれない。

 

「ブレス」のポジティブでいかにもポップソングらしい曲調に「ヒトリノ夜」の皮肉めいた毒と一致するようなフレーズが乗ったことで、こんなにも感動するとは自分自身予想外だった。

デビュー20年目を迎える中変わってきたものは当然あるけれど、変わっていないものも確かにある。私が痺れたかっこよさはまだ健在だし、それを違った角度で出してくることにいたく感動してしまった。

 

そういう経緯で好きになった「ブレス」だが、今回尾道の空の下で聴いたことでより一層大好きになった。

のんびりと、平和でおだやかにポジティブを夢見ているのに、現実的で。現実を見ながら皮肉をこめつつ、それにとらわれて足を止めてしまうのではなくしなやかに受け流しながら前を向く。

理想と現実の間、ポジティブとネガティブの間をマイペースに、時代の流れに振り回されずにしっかりと自分のテンポで進む。

そういう楽曲の世界観が彼らの故郷にとてもよく似合っていた。

 

この曲を演奏する時、昭仁さんは「たっぷり深呼吸して帰れよー!」と言葉を添えた。単純に綺麗な空気を吸って帰ってねというところでもあるだろうし、尾道が醸し出す穏やかに時が流れるような雰囲気には「息のしやすさ」も覚える。ロケーションも相まって「ブレス」をはじめいくつもの曲が心に癒しを与えてくれた。

 

*地元曲・ライブ定番曲・ヒット曲

さてセットリストの続きに戻るが、「ブレス」の後は歌詞の中に因島が登場する曲、ライブ定番曲、多くの人が知っているであろうヒット曲が散らされていた。

「Century Lovers」「ミュージック・アワー」では広島県のゆるキャラたちが登場。1人ずつ紹介があってこれもまた地元ならでは。

ステージにゆるキャラが10人ほどが並んでいる光景は単純に可愛らしすぎた。たくさん駆けつけてくれたため退場にも時間がかかり、しばらく待っていた昭仁さんが「……まだあそこか…ちょっと待てんな…と言いながら次の流れに入っていったことには笑った。

「Aokage」をアコースティックで披露する中、ふとステージ端に目を向けるとまだゆるキャラがいた。そういった意味でもゆるいキャラだった。

 

2人がそれぞれトロッコに乗って会場内をぐるっと一周してくれる場面もあり、どの席にいてもある程度近くで見られるような配慮もあった。

客席に登場した2人は我々の姿を近くで見て「よう濡れとるねえ、ごめんねえ」「よう頑張っとると思うよ」と言ってくださる。

でも、朝からずっと雨、開演後もレインポンチョ姿で雨に打たれっぱなしだったおかげか随分と環境にも順応してきていた。改まって「よう濡れとる」と言われるとまるで他人事のように「えっ、そんなにひどい状態になってます…?と思ってしまうほどには。

 

ポルノグラフィティは雨バンドである』。世間一般にどこまで浸透しているかわからないけれど、こちとら雨に打たれる覚悟はできている。

むしろ打たれに行っている。

…というのはさすがに強がりだけれど、晴一さん曰く「我々はこういう地球に住んでおる」のだから仕方ない。

 

「愛が呼ぶほうへ」の"償う人の背に降り続く雨"や、「サボテン」の"何処にいくの?こんな雨の中"という歌詞は雨の中で聴くとより映えた。

特に「サボテン」では、曲に合わせたかのように雨が強まったのがなんともドラマチックで演出のようだった。

 

終盤では「アゲハ蝶」「ジレンマ」をアリーナ席のど真ん中で披露する。

そもそもそこにステージは組まれていなかったのだが「真ん中に行って歌います」と告げられて後方から運ばれてきたのは、高く積み上げられたビールケース。

 

因島からまず大阪に出た彼らは、大阪城ホールの目の前・城天で路上ライブをしていた。その頃ステージとして使っていたのがビールケースだ。当時と同じような環境のステージ(「あんなに高くない」とつっこんでいたが)で、会場のど真ん中に立つポルノと一緒に歌った「アゲハ蝶」は、最高と表現するほかない。

2万人の歌声が響きわたり、余韻を残しながら空に溶けていくような音の抜け方はとても幻想的だった。

ライブのラスト1曲として定着している「ジレンマ」は大阪・城天時代からビールケースの上でも歌っていた曲だ。

故郷の空の下、大きなライブ会場のど真ん中、ビールケースの上から見る景色は二人の目にどう映ったのだろう。

 

*集まったファンとの距離感 

今回のライブでポルノグラフィティを見ていて「いつもより距離感が近い」 と思った。

もちろん物理的に彼らが客席のほうへ出てきてくれたというところもあるのだが、それ以上に感じたのは感覚的な、心の近さである。

公演1日目、9月8日はポルノグラフィティのデビュー日だった。

公演が始まり少し経ったMC中、昭仁さんは「今日から20年目突入しました!」と話した。客席のリアクションに「ありがとう!」と応える中、ごく自然に「おめでとうって言いたかったよね」とポツリと言ったのがなんだか胸に残った。

たぶん、その言葉選びはあまり良くはない。

おめでとうを強要するかのような文言になってしまっているのだけれど、それをさらっと言って微塵も悪意を感じさせないのがこの岡野昭仁さんである。

会場に集まってきているのが全国各地の、まあまあ濃いめのファンだと認識しているからこそ、純粋な思考で「言いたかったよね」がこぼれたのだろうか。

理解してもらえていることが嬉しく思えたのと同時に、いかにも昭仁さんらしくニュアンスが微妙な言葉選びに、流れを邪魔しない程度にニヤッとしてしまった。

 

 

 

2日目の公演中止、その時私は。

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雨の中の1日目を無事終えて迎えた2日目。この公演は、全国各地の映画館でのライブビューイングとWOWOW生中継が予定されていた。

そして天気予報通り、この日も朝から雨が降り続いていた。大雨警報まで出ている状況に「これはもしかしてヤバイのでは」と不安を覚えながら、10時半頃には会場に到着した。

開場は12時、開演は14時でまだまだ時間がある。1日目はバタバタと到着してあっという間に開演時間を迎えてしまった分、2日目は余裕を持って動けるように手配していた。

また1日目は入場時の混乱もあって開演時間が20分押してしまう事態にもなったので、この日は早めに着席し雨に打たれながら開演時間を待とうとしていた。

 

準備を整えあとは入場するだけという状態で、その前に因島観光協会のブースに立ち寄った。購入列に並び自分の順番が回ってくる直前のところでアナウンスが流れはじめたのだが、反響と人々のざわめきでよく聞こえていなかった。 

 

一斉にあがった悲鳴に一体なにごとかと驚き、そこで開催中止を知った。

そのタイミングでちょうど購入の順番が回ってきてしまう私の間の悪さたるや。悲報の直後にどんなテンションで売り場のお姉さんに注文すればいいのかと一瞬迷う。 

購入しブースを離れてアナウンスに耳を澄ますと、昭仁さんの声が放送されているところだった。

 

昭仁さんの申し訳なさそうに謝る声に、晴一さんのなんとか心を整理しつつもやっぱり悔しさの滲んだ声に、なんとも言えない気持ちになる。

 

レインポンチョはポツポツと雨をはじき続けていた。無情なその音ごしに聞くアナウンスはもの哀しく、できることならこの先同じ状況には出会いたくないな、と心底思った。

雨に打たれる覚悟はあっても避難勧告の発令にはなすすべもない。

こういう地球に住んでいるから仕方ないのだけれど、自然の圧倒的な力の前に屈服するしかないことに悔しさが募る。 時間をかけ力を入れて準備してきたポルノ側が、謝罪の言葉でしかその思いを伝える術がない、この状況が悔しい。

 

中止を受け止め、バスで山を下り新尾道駅へ。今回は尾道観光がまったくできなかったため、せめて少しでも経済を回そうとお土産売り場で散財して帰ってきた。

帰りの新幹線はJRさんが混乱を緩和できるよう計らってくれたようで、窓口で変更手続きをせずそのまま早い便に乗ることができた。新大阪駅まで戻り改札で「新尾道駅から乗ったんですがライブが中止になって…」と言うとすんなりと状況を把握してくれ、びっくりするほどスムーズに通してくれて拍子抜けした。

 

"しまなみロマンスポルノ'18"に足を運んで思ったこと

翌日の報道で、2日目にはサプライズで因島高校の生徒が登場する予定だったことを知った。

この日は2人の母校・因島高校の生徒300人と、同校合唱コンクールのテーマ曲でポルノの「愛が呼ぶほうへ」をコラボ予定だった。

今年3月、同校の卒業式でサプライズライブを行った2人は、後輩に開催断念を直接伝えたいと希望。岡野が言葉に詰まりながらも告げると、生徒から「歌って!」の声が。2人も「ここでみんなで歌おうか!」と返し、カラオケを使い急きょその場で合唱した。

1日目のあの空気を体感しているからこそ、実現していたらどれほど感動的だったろうと思ってしまう。そしてこれだけ多くの高校生が関わる企画でありながら事前に情報がまったく漏洩していなかったことには感心してしまった。

 

無事に開催された1日目、無情にも中止になってしまった2日目。両日あの場所に足を運んでみていろんなことを肌で感じることができた。

 

ポルノグラフィティを好きな人間にとって尾道の地を踏むことはとても重要な意味を持つ。今回それが叶ったこと、"ライブ開催"というカタチで連れてきてもらえたことにまずは感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

聖地巡礼は場合によっては地元の方に多大な迷惑をかけることになる。デリケートな部分だからこそ迂闊に足を踏み入れてはいけないという心配もある。

ライブの中で「また来てやって」と言ってもらったその言葉を覚えておき、またいつか改めてそっとお邪魔させてもらいたい。

もちろんまたここでライブを開催してくれるのならこんなに嬉しいことはない。しまなみで聴くポルノは、「ここでしか味わうことができない!」と断言できるほどとてつもない感動があった。

 

どうしても 「公演中止」という言葉のほうが大きく打ち出され、それは心に重たくのしかかろうとする。

でもついこの間、豪雨災害発生を受けても力強く前に進もうとポジティブな選択をしたポルノグラフィティの姿を見たところだ。悲しみや悔しさを前にどう立ち向かうべきか、その答えを私はもう知っているのではないか。

 

来週9月22日23時からのNHK「SONGS」ではこのライブに密着した様子が放送される。予告での昭仁さんの涙には胸が苦しくなった。

でも、きっと故郷へ向けた愛をしっかり感じられる内容になっているのではないかと期待している。あのライブで感じられたその想いが、たくさんの人に伝わる放送になったらいいなと、ただただそう思う。

 

 

…と、あまりに想いが溢れすぎてとんでもない文字数の記事になってしまった。いつものことながら…。

 

SONGSを見た後の私は、もしかすると今とはまた少し違った思いを抱くのかもしれない。

それでもまずは率直に、あの日あの場所で感じたことを残しておきたかった。

デビュー10周年の東京ドーム公演の感想をノート20ページに渡って書き散らした9年前の私に今言いたいことは、「グッジョブ!」に尽きる。だからおそらくポルノ30周年を祝っているであろう未来の私は、この文章を「グッジョブ!!」と受け取るのだと思う。

 

雨天決行も荒天中止も、きっとこれからまだまだ続くポルノの歴史に大きな出来事として残っていく。悔しさだったり悲しさだったりほろ苦さだったりを、これから先感じる喜びをさらに大きくするための養分にしながら、次の現場に全力を注ぎたい。

外部からは「ポルノファンはきっと悲しみに暮れているにちがいない…」と思われるかもしれないが、すでに次のライブツアー開催が発表されている

否が応でも次に目線を向けざるをえない、そんな忙しなさがいつも以上にありがたい。

 

 

ここまでメモリアルな雰囲気を最大限に出しおきながら実はポルノグラフィティはまだ「20周年」を迎えていない。19周年を迎え、あくまで20年目に入ったところだ。20周年イヤーに突入し、祭りはまだ始まったばかりなのである。

 

俺たちの戦いはこれからだし、ポルノグラフィティ先生の次回作にはまったくもって期待しかない。

2019年9月8日を迎えるその時、言いたくて仕方のない「おめでとう!」を受け取ってもらえるのを、楽しみにしている。