「俺は守ろうと思ったもの。
この映画を観た時に、誰か『原作と違う』とかいろんなことを言う人がいたら、その人の所へ行って『そうじゃないよ、君』って言うのは。
それを俺は言う役目をやらなきゃいけないなって思ったので。」
これはこのほど公開された「エヴェレスト 神々の山嶺」の原作者、夢枕獏さんの発言だ。
3月13日、この映画で主演をつとめた岡田准一さんのラジオ番組「GROWING REED」の中でお二方の対談が放送された。
この放送を聞いて私がいちばん心に残った発言が、冒頭に引用した夢枕さんの言葉。
ちなみに現在発売中の「ダ・ヴィンチ」では阿部寛さんとも対談していて、そこでも同様の言葉をかけられていた。
いわば作者のお墨付き。映画の制作陣にとってはこんなに嬉しく、誇らしい発言は他にないのではないかと思えるほどの言葉だ。
映画を観る前に番宣もいろいろとチェックしたが、その中でも印象深かったのがこの原作者の言葉であり、あらためて「原作のある作品が実写化するのってどうなのか?」と考えた。
最近の映画やドラマは本当に「原作ありきの実写化」であることが多い。
ドラマにいたってはオリジナルストーリーのほうが珍しいような気さえする。
私もこれまで一喜一憂を繰り返してきた。
おそらく「一度も不満に思ったことが無い」なんていう人は本当に少ないはずだ。
しかしこれはあくまで作品を見る側、提示される観客側の意見。
冒頭にも引用した岡田さんのラジオでの「原作者と主演俳優の対談」は、あまり触れられることのない部分まで触れているような気がして、とても興味深かったのだ。
「エヴェレスト 神々の山嶺」という作品は、夢枕獏氏の小説が原作となっている。
連載は1994年から1997年に及び、上下巻として発行されたのが1997年8月のこと。
およそ20年前の作品だ。
驚くべきは、作中に登場するエピソードには実話が含まれているという点。
マロリーとアーヴィンの登頂の謎も実際のとおりだ。
マロリーの遺体は1999年、つまりこの小説が発表されたあとに発見された。
「映像化不可能と言われていた作品」という謳い文句はたまに聞く響きだが、この作品もそう謳われているものの1つであり、企画されては途中で立ち消えてしまい実現せず、それを繰り返してきた。
具体的には、これまでに3度企画されたらしい。*1
そうしてようやく出来上がったのが今回の映画で、タイトルには「エヴェレスト」と付けられて公開されることとなった。
実写化する時に何を優先するのか
まず前置きとして状況を説明しておくと、原作者の夢枕さんは撮影現場まで足を運んだ。
都内某所の…などではない。なんとエヴェレストまで、標高5000m越えのとんでもないところまで陣中見舞いで訪れたそうだ。
岡田「その現場で、会いましたけど」
夢枕「びっくりしましたよ(笑)」
岡田「どうでしたか」
夢枕「その顔を見た時に」
岡田「あ、変わり様っていうか…」
夢枕「うん。深町っていうのはあのー…羽生丈二っていうのは、僕の中で憧れの部分が入ってて」
岡田「阿部さんが演じた」
夢枕「阿部さんがやった、その羽生丈二…」
岡田「伝説のクライマー」
夢枕「伝説の。で、岡田くんがやった、」
岡田「深町」
夢枕「深町は、俺なんだよ(笑)実は。
だからもうちょっとね、あのーなんか軟弱なんだよね。心が(笑)
だからそれを超えて、もっとなんか…。
ま、岡田くんも言ってたんだけど、野心家な部分をやっぱり出してるっていうのはやっぱりその見たときに、なんかね…感じたよね」
岡田「伝わりました?」
夢枕「うん、あの…やっぱり髭も影響あったのかもしれないね」
岡田「うーん、でもちょっと映画にするときに、原作者の方に言っていいのか分かんないですけど、」
夢枕「ええ、ええ」
岡田「ちょっとやっぱり変えたん…ですよね」
夢枕「や、それはね、変えたほうがいいよ」
岡田「や、でも…」
夢枕「うん」
岡田「僕はやっぱり、その原作者とか、原作ファンの方に喜んでもらうっていうのは、大事にしたい役者なんですよね」
夢枕「うん、まぁそうだよね」
岡田「だけどどうしても軟弱なほうに持っていくと、上手く流れて行かない…2時間にしちゃうと、どうしても流れて行かないかなぁっていう。
羽生がなんで『ついて来い』って言うのかとか…羽生になれなかった男じゃないですか、」
夢枕「そうそうそう」
岡田「深町は。」
夢枕「うん」
岡田「だからそのなんか…あの、野心ていうか我、我なのか何かっていうのを持ってたいなとか、」
夢枕「うんうんうん」
岡田「いろいろだからちょっと説明が、長い本だと出来ることが2時間だと出来ないなってなった時に、どう心の中心を変えずに、その上のもの?の見え方で作っていくかって、話を上手く通していけるかっていうのは…」
夢枕「あのね…それはやっぱり大変な問題だと思うんだよね、お互いに」
岡田「はい」
夢枕「それは僕のほうはもう全部預けるわけだから。その監督なり、役者さんに。役者さんはその預けられたものを、そのままやったほうがいいのか変えたほうがいいのかって、やっぱり迷うと思うんだよね」
岡田「はい」
夢枕「それはもう…監督と役者さんのほうが『こうやろう』と思ったらそれがもう正解だと思ってるのね。」
岡田「へぇ…」
夢枕「それがどういうようなものであっても。そこはね、原作者はね、口を出しちゃいけない領域なんだよ。」
阿部寛演じる孤高の天才クライマー、羽生。
岡田准一演じる野心家のカメラマン、深町。
これはそれぞれ夢枕さんの「憧れの人物像」と「そうはなれない弱い自分」が投影されたものだ。
しかしこの映画では深町のイメージがかなり変わっている。
原作では心の揺れなどが表現されその軟弱な部分について言及されている部分も見られるのだが、実写版ではあまり見受けられず野心に満ちていた。
なぜかと言えば、2時間程度の尺で収めるためにはどうしてもそのキャラだと上手くストーリーが進まないため、キャラ設定が少し変更されているからだ。
主演俳優として岡田さんがやろうとしたことは「キャラ設定を変えながら、いかにその人物の核を残し表現するか」。
そのキャラクターを象徴するような意志、原作に込められた思いを映像に落とし込みながら、どれだけ映像作品として完成させられるか。
エヴェレスト〜に関しては私は原作未読の状態で鑑賞したため、原作ファン側として深く語る資格はない。
しかし大好きな作品が実写化される時に私が原作ファンとして一番気になることといえば、やはりその「再現度」だ。
キャラクターの雰囲気は原作通りなのか。
漫画が元であれば外見の部分もそうだ。単純に、絵に似ているかどうか。
小説が元になっていれば文章で描写されたものを読んで思い描いていた人物像と一致するか。
大好きなあのシーンは映像になるとどうなるのだろうか、そもそも重要な場面はすべて入っているだろうか。
思い描いていたものと全然違っていた時、原作ファンは怒り落胆する。
原作を愛していればいるほどそのショックは大きいし、おいおい何てことしてくれたんだ…と思うのだ。それはもう、大切な宝物を汚されたかのような気分にもなる。
しかも一度実写化されたものが改めて実写化されることは、まず無い。
続編ならまだ可能性はあるが全てを一新してもう一度やり直す、なんて奇跡はそうそう無いのだ。
ある意味「もしも実写化されたなら」と妄想しているくらいが一番楽しいのかもしれない。
と、ここまで書いたのはあくまで「原作ファン」としての私の考え方である。
そんな私が実写化の際によく見かけるのは「阿鼻叫喚な原作ファン達の意見」であったり「自らが生み出したキャラクターが実写によって具現化することを手放しで喜ぶ原作者のコメント」だ。
今回の「内容を一部変えられて実写化された原作者」という立場にある夢枕さんの発言は物事を俯瞰でとらえられていて、単純に素敵だなあと思った。
他に印象的だった言葉に
「敬して遠ざける」
「(原作者を)尊敬をして、遠ざけてくのが一番ラクなんだよね、現場っていうのは」
というものがあった。
なんだろうか、現場というものにまったく縁もゆかりもない一般市民のくせに「わかるわかる、なるほどなー」と思ってしまうこの感覚は。
同じ世界を描いていながらフィールドが違うのだから相違点は生まれて当然で、問題はその奥底にあるものをいかに一致させるか。
実写化が行われる際に、優先されることはおそらく2通りある。
1つは原作をそっくりそのままに描写し、再現すること。
そしてもう1つは、その原作の本質とも言えるべき部分を残しながら、少し違った見せ方で同じ世界を描くこと。
今回の「エヴェレスト 神々の山峰」は後者の要素が強かったように感じる。
岡田「じゃちょっと緊張しますけど訊きます。僕らは、うまくその原作を、魂を継いだ映画に出来たでしょうか?」
夢枕「大丈夫!」
岡田「お。よかった…」
夢枕「ま、横にいたから分かってると思うけど」
岡田「(笑)」
夢枕「(笑)」
岡田「そうなんです。実は(笑)試写で、横で観たんですよね」
夢枕「ちょうど二人で並んでね、観てて…」
岡田「僕もう心の中では『横 獏さんかよ…!』と思いながら(笑)、気になってしょうがなくて、獏さんのほうが。」
夢枕「いやだから…両方でね、ドキドキするよね?
俺はほら、批評されてる横にいる立場なんだよ。自分の原作を映像が批評してるわけだよね、だから。」
岡田「はいはいはい…」
夢枕「俺の作品がどういうものかっていう批評行為をさ、されてるのを見てるわけだからさ、それはドキドキするんだよ、原作者は。」
岡田「うーん。じゃ一緒にドキドキ…」
夢枕「だから一緒にドキドキして、こっちは泣かされてさ(笑)」
岡田「獏さんが4回ぐらい泣いてくれてたんですよね」
夢枕「やぁ…横で泣きましたよね、俺は…うん。」
岡田「よかったぁと思って…。や、原作者の方が、『や、まぁ世界観違うんであれはあれで』みたいな宣伝をされる原作者の方がいるじゃないですか(笑)明らかに気に入ってないっていう…」
夢枕「あー、いるよねぇ。」
岡田「その、いっぱいある作品でですよ」
夢枕「あるある、うん」
岡田「『あれは俺の作品じゃないんで』みたいなことを言ってる時って、」
夢枕「平気で言う人いるよね。」
岡田「大体気に入ってないじゃないですか。原作者は認めてないっていう状態…もう聞きたくないんですよ、僕は。聞きたくないっていうか…」
夢枕「そりゃそうだよ、だって大変だもんね?原作者…いくら褒められても、嘘言ってるかもしれないって思…」
岡田「うん…まだちょっと疑ってますけど。僕。」
夢枕「いやいや!」
岡田「獏さん(笑)」
夢枕「疑わなくて大丈夫だよ、それは(笑)」
岡田「いや、不安なんですそれぐらいやっぱり」
夢枕「ああ、そうだよねぇ…」
岡田「原作者にリスペクトと、原作ファンに喜んでもらえるリスペクトがあって、映画はやっぱり成立すると思っているので」
夢枕「大丈夫。だからもう…」
岡田「大丈夫ですか…」
夢枕「俺は守ろうと思ったもの。この映画を観た時に、誰か原作と違うとかいろんなことを言う人がいたら、その人の所へ行って、『そうじゃないよ、君。』って言うのは(笑)。それを俺は言う役目をやらなきゃいけないなって思ったので。
これは今、はっきり皆さんに…聴いてる皆さんにね、それは言っておきたいなと思って。」
岡田「ありがとうございます」
夢枕「大丈夫」
「明らかに気に入ってないコメントを言う原作者」のくだりにも大いに「あるある!」と思った。
観客側が思っていることはやはり業界におられる方とて同様に感じているのかと新鮮だったのだが、よく考えるとわりと危険な発言だ。
発言には責任が伴う。退路を断つような発言はそこから逃げまいとする意思の表れなのだと思うがたまにハラハラする。
そして原作者だってそう安々と太鼓判を押すわけにはいかない。
実写版がとんでもなく酷い出来であればそれに対して好意的なコメントを発することは危うく、怒り狂ったファンの矛先が原作者に向くことだってありうる。
きっとこういったコメントの裏側には実写化にいたるまでの過程であったり、いろいろと複雑な事情もあるのだろう。
少なくとも、好意的なコメントが出される背景には原作者と実写化スタッフとの円満な関係が感じられてなんだか安心する。
とにもかくにもこの「エヴェレスト 神々の山嶺」は、原作者である夢枕獏さんが実際に鑑賞された上で、守ろうと思ってくれた作品なのだ。
この事実は非常に大きい。
「エヴェレスト 神々の山嶺」感想
映画のタイトルから受ける第一印象はとても重要である。
ぶっちゃけた話をすれば「エヴェレスト 神々の山嶺」という言葉からどんな印象を受けたかと言うと「これまた随分とお堅そうな…」だった。
それ以前に、まずエ"ヴェ"レストだ。
ヴェである。
前回記事に引き続き度々言って申し訳ないが、クセがすごい。ヴェはクセだ。
私のような小心者は映画館の窓口でチケットを買う際も
「エヴェ…ヴェって言ったほうがいい…?
でもヴェって忠実に言ったら言ったで、『こいつヴェって言いよったぞ』と思われるのでは…?」と変に悩む。
あれだ。
小洒落たお店で「なんたらかんたらのホニャララ風デミグラスオムライス」とか、無駄に長く少しポエムったらしいメニュー名に恥ずかしさを感じながらも忠実に注文し、店員に「デミオムライスですね!」と、ポエム部分を完全に省略されて確認された時の「いやそこは言わんでよかったんかい!?じゃあなぜ付けたそのいらん部分!?」ってなるやつと似たような感じだ。
結局私は完全に省略して「エベレスト」と言った。
ヴェのクセにも、神々の山嶺という言葉の重みにも勝てなかった。申し訳ない。
そんな話はどうでもよくて、とにかくヴェのクセ…いやそれもどうでもよい。
原作のタイトルにもなっている「神々の山嶺」という言葉の重厚感。
それを象徴するかのように客層はご年配の方が多かった。予想はしていたのだがそれ以上に多く正直驚いた。
私がアラサーだということも考えてみてほしい。そんな奴が「え、私もしかして最年少?」と感じたのだから、全体的にどれだけ年齢層が高かったかおわかりいただけると思う。
おそらくここにはアイドル岡田准一を観に来ている人はいない。
ただスクリーンに映しだされる作品の、その世界観を楽しみに来ている。
これはシビアな評価になるんだろうな…と、そんなことを考えた。
作品を見終わった時、「大人になったなー…」と率直に思った。
あのおぼつかない演技でドラマデビューした岡田さんがこんなに大きくなって…というわけではなく、自分に対して、だ。
それくらいこの作品の空気感はなんと表現したらいいか、とにかく渋い。
そこにあるのは雄大で気高い風景と全体的に重々しい世界観。そして静かで狂気じみた熱。
正直なところ、私が10代あるいは20代前半であったらこの作品を観に行こうと思えていたか疑問だ。
わかりやすく軽快な場面転換が用意されているわけでもない、コメディ要素もなければ、恋愛要素もほぼ無いに等しい。
女性キャストとしては尾野真千子さん演じる岸涼子が登場するにはするのだが、壮大なラブストーリーは展開されない。設定として用意されただけ、といった印象だった。少なくとも映画の中ではそういう印象だ。
これを面白い、興味深いと言えるかどうか。本当にこればかりは好みによるとしか言いようがない。少なくとも10代の私ならよくわからなかっただろう。
おそらくこれは「ここが素晴らしい!」とどれだけ熱く語ったところで、興味のない方からすれば「ふーん」で終わってしまうようなタイプの映画だ。
雰囲気のある映像というのは大体そんなものだと思う。それも1つの"クセ"だ。
原作があるのは当然把握していたがここはあえて読まずに観ることにした。
観たあとでとりあえずざっくりと原作をチェックして、「原作だとそうなっているのか」という点に出くわした。
その1つが阿部寛さん演じる羽生丈二の手記の部分。
大筋は同じなのだがこの見せ方はある意味小説には小説ならではの、映画には映画ならではの部分が色濃く出ていたような気がする。
文字だけでこんなにも引き込まれるものなのかと思うほど、この手記の部分は生々しく、極限状況下での羽生丈二の心の内が描かれていた。
2時間という枠に収めるために簡略化された部分は多い。
深町と羽生の出会いのシーンも流れが少し違っている。映画版深町は勘がすごい。
そして羽生と、佐々木蔵之介さんの演じる長谷についてのエピソードはかなり薄くなっていた。これも原作愛読者の方がうーん・・・と思った原因のひとつではないか。
この2人においてはエピソードのモデルになった登山家がいる。
それが森田勝氏と長谷川恒男氏で、中でも「50m落下し宙吊り状態で気絶、その状態から右手・右足と歯のみで25mをよじ登り生還した」というのが実際のエピソードであるというのだから驚く。
全体的に、目の演技が印象的な映画だった。
なかでも岸文太郎、風間俊介さんの演じた例のシーンの目は忘れられない。
出番こそ少なかったが強烈なインパクトだった。夢に出てきそうである。
阿部さん演じる羽生は他を寄せ付けない圧倒的かつ異様なオーラをまとい、その姿はまさに孤高の天才クライマーだった。
原作とは少し違ったが、岡田さん演じる深町のギラギラとした野心みなぎる目も印象的だった。
この映画は、原作と少し違う。そして大きく違う。
今回の実写化に関してはこの表現が一番しっくりくる気がしている。
1つ1つに関しては少しずつ違っているだけだ。
しかしエピソードを削ったしわ寄せは少しずつ蓄積されて、見終わった時の感想に違いを生む。
原作では心理描写が細かく一連の感情の流れに納得できる部分も、映画の場合はかなり振り切ったかたちで描かれているため、原作を読んでいるか否かで印象が変わる映画だと思う。
たとえば、ラストで深町が羽生を発見したのはノーマルルートでのことだった。
羽生はあくまで前人未到のルートにこだわり、南西壁側ルートからの登頂を目指した。
居るはずのない場所で羽生を見つけた深町は、下山中だったからこそ羽生がこの場所にいるのだと、頂上を踏んだのだと確信する。そして彼の様子から、最後まで生きて下山しようとしていた意志を感じ取るのだ。
全体的に「そこにある感情の強さ」は感じるのだが、「それに至るまでの感情の揺れ」が薄い。
これがおそらく登場人物に共感しづらかった原因ではないだろうか。
時間の制限もあるので仕方がないとはいえ、その部分は実に惜しい。
しかしながら映像作品には映像作品としての価値がある。
役者陣の熱演には無条件に引き込まれたし、そこには確かに深町が、羽生がいた。
そして何より、実際に現地を運んでまで撮影したあの壮大な自然はぜひ大スクリーンで体感するべきである。
私がこの作品を映画館で見て欲しい理由はこれが一番大きいかもしれない。
作中で、「なぜ山に登るのかという問いは、なぜ生きるのかと同じ問いだ」という内容の文章がある。
なぜ生きるのかと問われた時、簡単に答えが用意できる人間はいない。
それと同様に登山家たちは登るのだ。ただ、登るのだ。
「山に登り続ける」その部分には共感できなかったが、そこには私が理解できない、もしかしたら本人たちにも理解できていない「なにか」があるのだろう。
映画を観たあとに原作を読んで「そうだったのか!」という発見もあったので、ぜひ一度原作で物語をなぞることをおすすめする。大体の答えはそこにある。
また漫画版のラストは原作とは異なるが、この終わり方も感動的。
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*1:J-WAVE「GOLD RUSH」内での岡田さんの発言より