いよいよ12月6日、先日終了した「V6 LIVE TOUR 2015 -SINCE 1995〜FOREVER-」の最終日の模様がWOWOWで放送される。
これに合わせてV6が主演した映画2本も同日放送される。2003年の「ハードラックヒーロー」と2005年の「ホールドアップダウン」だ。
それぞれ12年前、10年前の映画なので今回が初見の方も多いのではないだろうか。
かくいう私も「ホールドアップダウン」については劇場で見て以来なのでほぼ10年ぶり、「ハードラックヒーロー」はDVDで何度も見たが最後に見たのはいつだったか…というくらいで、正直記憶が遠い。
なので放送を前に一度振り返ってみようと思い、今回は「ハードラックヒーロー」について予習してみることにした。
CDと連動させて生まれた映画
この映画は2003年5月発売シングル「Darling」、同7月発売シングル「強くなれ(COSMIC RESCUEと両A面)」、さらに同8月発売のアルバム「∞ INFINITY〜LOVE&LIFE〜」に収録されている「Hard Luck Hero」の3曲と連動している。
今PVを見ると「この細切れの映像はなぜ入っているのか?」という気持ちになったりならなかったりすると思うのだが、当時は「PV公開と共に徐々に映画の内容を公開していく」という形をとっていた為あのようなPVになった次第である。
一応「業界初の映画とPVの連動企画」「監督は世界的評価も高いSABU監督」という触れ込みだった。
そういった背景があるため、映画作品としては79分という短い枠に収まっている。
イベント試写会のみで公開
映画と言うものの、通常の劇場公開は行われずに抽選で選ばれた1万人のみがイベント試写会で鑑賞できるという方式で2003年9月に公開された。
抽選方法はアルバムに封入された往復ハガキを送るというものだったのだが、ハズレでも返信があった。もしかして、と思って探してみたらまだ持ってましたハズレハガキ。無駄に物持ちがいい。
「抽選の結果ご希望にそえない結果となりました。今後もV6の応援をよろしくお願いします。エイベックス株式会社」という文言が並び、その下にはカミコンのインフォメーションダイヤルが記載されていえる。(この年の10月〜12月にカミコンがあったため)
さらにその下にはカミセン3人それぞれの「残念でした」という労いの言葉が…そして「カミコンで会いましょう」と。
慰めてもらってるんだかあざとい商法なんだか…!
この試写会は全国5ヶ所で行われたのだが東京会場にはV6とSABU監督が登場。オープンカーに乗ってパレードしながらの登場というド派手な方法が取られた。時代を感じる。
作品の内容について
映画の内容もスピード感のあるものだが、撮影もスピーディに終わったらしく1週間ほどで終了。
井ノ原『「ハードラックヒーロー」はスピーディかつ繊細な映画。SABU監督という、今まで僕ら6人のことをよく知らなかった人が、率直に見た僕らの印象で「彼らにこういうことをやらせたい」と作ってくれた。それがすごく的を射てるんだよ。』
(POTATO/2003年7月号)
SABU監督が抱いた印象で当てられた役が以下である。
石井直人(無国籍料理店・店長)/井ノ原快彦
浅井タカシ(無国籍料理点・バイト) /岡田准一
池山忠志(サラリーマン)/坂本昌行
岸本健太(サラリーマン)/長野博
藤田ケンジ(フリーター)/森田剛
工藤ユウジ(フリーター)/三宅健
的を射てる!と大声で言っていいものなのかと悩んでしまう。特にカミセンが…。
役名を色分けしたのだが、映画の中ではこの3組に分かれている。その運命が交差するストーリーだ。
ヤクザが経営し、裏でキックボクシングの賭博試合も行っている無国籍料理店。その店長・石井(井ノ原)とバイト・浅井(岡田)。
ある日試合に出る予定のタイ人ボクサーが来ず困った石井は浅井に代役を頼む。八百長試合で負けなくてはいけなかったその試合で浅井は偶然にも勝利してしまい、試合が盛り上がらないことに怒ったヤクザが発砲。逃げ出す石井、浅井。
その場には、食事に来ていた池山(坂本)・岸本(長野)、とある思惑を持って店を訪れた藤田(森田)・工藤(三宅)の2組も居合わせていた。
そこに警察も乱入し、それぞれ追われる身となった3組のカーチェイスが始まる。
ネタバレしすぎない程度にストーリーを述べるとこんな感じだ。
この作品、正直言うと好みは分かれると思う。
このなんとも言えないアングラ感、好きな人にはたまらないはずだ。私も当時はこの雰囲気にとても魅力を感じた。
「ジャニーズアイドルが演じるB級映画感」とでも言えばいいだろうか。
登場人物の運命が偶然にも交差していく様を取り扱った作品はベタといえばベタなのだが、やはり魅力的だ。
加えてSABU監督がそれぞれにやらせたいと思った役柄が、効果的に作用している。
3組の中でどれか1組だけ推しを決めろと言われたなら、私は坂本・長野組を推す。
情けないサラリーマンな坂本くんと、豹変して狂気な演技を見せる長野くん。私は長野博の狂気演技が好きだ。普段にこやかな人が演じる豹変する人物、正直大好物です。
カーアクションにも挑戦した長野くんは「楽しんでやれました。スピンターンとかやらせてもらって」と試写会で語っており、こんなところでもモータースポーツ好きの片鱗を覗かせていた。
私の記憶が正しければ坂本くんを助手席に乗せるシーンの長野くんの表情が秀逸で、というかやっぱり思い出すほどに長野くん最高だった気がする。
おもしろかったシーンはというと、やはりとまどいながらタイ人に扮する岡田氏の謎のダンスだろうか。繰り返し見て何度も笑った記憶がある。
これが後にアカデミー賞を受賞する男である…
と、ぜひ心のなかで各自ナレーションを入れながらご覧いただきたいところだ。
主題歌「Hard Luck Hero」
この作品の主題歌でもある「Hard Luck Hero」なのだが、実は作詞はSABU監督だ。
Hard Luck Hero - V6 - 歌詞 : 歌ネット
改めて聴いてみたのだが、めちゃくちゃかっこいい。
ヘッドホンで聴くと特に1番のAメロ、歌声が左右に振り分けられているのだがこの効果が絶大。
唇を微かに歪め、あいつが俺にこう言った
浮かない 見えない 先がない 届かない 現実に勝てない
高層ビルの踊り場で、伏し目がちにあの娘が言った
つまらない かまわない しょうがない 嘘じゃない 何も感じない
この曲の歌詞の構成として、Aメロでは「誰かに言われた否定的な言葉」が並ぶ。
中でも1番ではこの「否定的な言葉」の部分が左右に振り分けられていて畳み掛けるように聴こえてくる。これがなかなか巧妙で、まるで自分が浴びせられているようで、閉塞的な気持ちになる。
そこからBメロでは、迷いの中にも希望があることを願うような歌詞に。
さらにサビでは迷いを振り切ったかのような歌詞が並んでいて、今更ながらこの構成が見事だと思う。この曲を一言で表すなら「反骨*1精神」の曲。
加えてこのロックな曲調。
改めて聴いてみると意外とシンプルな構成のように感じる。ギターもかっこいいが、実はベースも抜群にかっこよくないか。聴けば聴くほどかっこいい。
映画の中でも走るシーンは多いのだが、主題歌までも走り出したくなるような、走り出さずにはいられないような曲にしてくるとは。
まさしく映画のために作られた曲で「音楽と連動した映画」の主題歌としてふさわしい。
そう考えると、この映画にとってこの曲の持つ意味って結構大きい気がする。
また「Darling」はリリースの都合上無理やりこの企画に盛り込まれたという感が否めないが、もう1作の「強くなれ」は「Hard Luck Hero」と近い雰囲気の歌詞だ。
この2曲のなんとも言えない世間に対して反発している感じは、10代の私にはたまらなくかっこよく感じた。
もちろん今でもかっこいいと思うし反骨精神に共感する面もあるのだが、やはりあの頃感じたものとは少し違うところもある。
個人的には、比較的ご新規ファンの10代の方にぜひ聴いていただいて「この曲イイ…!」と思ってもらえるきっかけになればいいなあ、とこっそり思っていたりする。
- アーティスト: V6,HIROSHI NAGANO,MASAYUKI SAKAMOTO,YOSHIHIRO INOHARA,GO MORITA,JUNICHI OKADA,KEN MIYAKE
- 出版社/メーカー: エイベックス・トラックス
- 発売日: 2003/08/06
- メディア: CD
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参考メモ:この頃のV6
V6夏のコンサートは代々木で2週間、2プログラムを日替わりで。
カミセン主演映画「COSMIC RESCUE」公開。さらに岡田くんは「木更津キャッツアイ日本シリーズ」も公開。
春からトニコン。イノッチ誕生日にカミセン登場、ガチャピン・ムックもお祝いに駆けつけ会場全体でハッピーバースデーを歌う。イノッチ号泣、坂本・森田・三宅もらい泣き。
*1:権威・権力・時代の風潮などに逆らう意気