「イノッチのファンサがすごい」というウワサをご存知だろうか。
ファンサービス、通称・ファンサ。
目線をもらう、手を振ってもらう…というシンプルなものから、近年ではオリジナリティ溢れるファンサを求めてうちわを自作する人も多い。
そういううちわを"ファンサ要求うちわ"と言ったりするそうだ。
こういうやつである。
自作といっても最近は便利で、こうして市販されている文字シールを買って貼るだけでも簡単に作ることができる。自分好みの書体・色などを指定し注文できるサイトもあるようで、土台とする無地のうちわも百円均一で売っている。
一から手作りしようと思っても材料のほとんどが百均で揃えられてしまうのだからまったくいい時代だ。
もっとも、百均にそういうものが無かった頃にはこういった"ファンサ要求うちわ"自体あまり見かけなかったように思う。「手作りうちわ」という言葉で私の頭に浮かぶのは、いまだにやはり名前をドーンと貼り付けてあるタイプのものだ。
私がはじめてうちわを作ったのは15年ほど前だったか。
当時作り方を知りたくてネット検索してみると「公式うちわサイズでキレイに作りたければ、公式うちわを1本犠牲にして写真の上から画用紙を貼り付けて作るしかありません」みたいな答えが出てきて非常に悩ましかった覚えがある。
犠牲を払わずにキレイなうちわが作れるなんて、やっぱりいい時代だ。
V6の中でそういう"ファンサ要求"うちわに反応しがちなのが井ノ原さんで、三宅健氏いわく「そういうのはウチの井ノ原くんが専売特許」。
反応しがちというか、目についたものを片っ端からやっていくくらいの勢いだ。
東に「ピースして」うちわあればダブルピースでイェイイェイし、
西に「バーンして」うちわあれば心ごと撃ちぬき、
南に「投げチューして」うちわあれば惜しみなくキスを飛ばし、
北に「はじめまして」うちわあれば丁寧にお辞儀をするような、そういう人である。
「はじめまして」うちわは実際に相方さんが2年前に持っていったもので、外周花道とスタンド1列目の至近距離で目を合わせお互いにお辞儀をし合っていた。
なんと丁寧な…!と度肝を抜かれたものである。アイドルとはじめましての挨拶をしっかりしている光景は、隣で見ていて非常に不思議でおもしろかった。その流れからおこぼれで目線をもらえたこともすでに懐かしい。
そして今年のツアーで、またもファンサの場面に居合わせることになった。
(※以下、コンサートのセットリストのネタバレはしませんがステージセットの構成について触れているのでご注意ください。)
「V6 LIVE TOUR 2017 The ONES」大阪城ホール最終日、またも相方さんが取ってくれたチケットで参加させていただいた。
今ツアーは実に2年ぶりの開催となる。みんなが待ちに待っていてチケット倍率もなかなかのもの。私自身の名義で申し込んだものは全滅だった(のちに制作解放席で当選し何とか敗者復活を遂げる)。
前出の相方さんが前回スタンド1列を当てた時もあまりに贅沢な思いをさせてもらったので「生涯これ以上良い席に座ることはもう無いかもしれない…」とさえ思ったのだが、今回はアリーナ。
それも座席に着いてみれば前から数列目、なんなら最前付近といってもいい。
それも花道の真横だった。
名義の仕事っぷりがすごすぎる。
相方の名義にもし人格があるなら相当にデキる奴に違いない。
そして私の名義はたぶんポンコツな奴なのだろう。どうにか早く出世してバリバリ仕事してほしい。たぶんやればデキる奴なんだと信じている。
コンサートが開演してみればV6がすぐそこにいて、目の前で踊るし、歌うし、こっちに来るし、もうてんやわんやだった。
いろいろあったのだが今回はとりあえずその中で一番すごかったファンサについてお伝えしたい。
タイトルの通り井ノ原快彦のファンサービスを間近で見たらえげつなかった、という話だ。
事の発端は私たちの後ろの席にいた女の子。
かなり若く、幼くも見える。彼女が持っていたうちわが「バーンして」の文字をあしらったものだった。
イメージとしてはこういう感じだ。しかしこういった既製品の文字ではなく手作り感のある書体がシンプルに貼り付けられていて、一生懸命切り抜いてせっせと作ったんだろうなあかわいいなあ、なんて思っていた。
裏面には「快」の文字。井ノ原さん担当なのだろう。
今回のコンサートのセット構成はメインステージ・センターステージ・バックステージ。
それをつなぐようにアリーナ中央に一本の花道が設けられていた。
各ステージを使いわけながらのパフォーマンスではあるのだが、動線の都合上からいっても最終的にメインステージに戻ってくる。
後ろのステージに行くたびに全員が花道を通ってメインステージへと戻っていく。
当たり前のことなのだがこれがかなりやばかった。
まったくもって単なる通り道ではなく、一瞬で去っていくのかと思いきや結構ゆったりと歩いてくれた。
実際にそこに居て感じたのは、V6全員が花道横もめちゃくちゃ丁寧に見てくれているということ。タイミングや運も重なったのかもしれないが「ああ、逆側しか見ないでそのまま行っちゃった…」みたいながっかりがあまり無かったように思う。
一番近くに来るとその距離2〜3mくらいだろうか。
さすがにどこに目線をやっているかもかなりわかるので、隣の人を見ているなぁとか、後ろのほうを見ているなあとか、私のうちわ見た、からの、目があった、とか、そんな次元である。とりあえず簡単に言うとやばい世界だった。
そんな中で事件は起こった。
メンバーがセンターステージで曲を歌い、ラストサビからは手を振ったりしながら花道を通りメインステージへと戻っていく。揃って戻っていくというよりはそこそこバラバラだったような気がする。
井ノ原さんがセンターステージからメインステージへ戻る姿を、こちらも手を振ったりしながら目で追っていた。
私たちの真横にあたる位置を通り過ぎていこうか、という時だった。
この時私からは後ろの「バーンして」うちわの女の子は見えないのだが、井ノ原さんの目線の動きを追っていると確実にうちわを捉えていた。
それまでもお行儀よく胸のところでうちわを握りしめていた子だったから、たぶんこの瞬間もそうだったのだろうと思う。
井ノ原さんの目線がやや下を向き、その目線をほんの少し上げると同時に指鉄砲を作り、撃った。
つまりうちわを見て、女の子の顔を見て、親指と人差し指で鉄砲を作って照準を定め、手首のスナップを効かせて撃った。歌いながら、やや微笑みながら。
途端、女の子と周辺から上がる悲鳴。
撃った際に進行方向とは逆を向いていたという点がまたミソだ。身を翻し、颯爽とメインステージへと駆けていく井ノ原快彦。
今回ばかりはフォントサイズを大きめにして、ひとこと言わせていただきたい。
「かっっっっっっっ…………こいい………!!!!!!!!!」
あなたは井ノ原快彦がバーンしている姿を、その照準先付近から見たことがあるだろうか。
はっきり言って私はかなり「思てたんと違う!!!!」と衝撃を受けた。
彼が今ツアー中、ファンサ要求うちわに応えている、いや応えまくっていることは耳に入ってきていた。その実、応えまくっているだけに1つ1つに対する威力はそこまででもないのでは?とも少し思っていた。
そういうところが好きなところでもあるのだが、ご機嫌なハイテンションで調子いい感じに片っ端からガシガシ応えているのだろうか、などと想像していた。
ところがどっこい、実際に間近で被弾した私はといえば数日経った今も「あのバーンはすごかった…すごかったぞ…なあ…」と数時間おきに思い出してしまうくらいの後遺症が続いている。重症である。
一連の動作にかかった時間はほんの数秒。
その中で
①親指と人差し指で照準を定めた瞬間(ピン!と腕を伸ばすのではなくて軽く伸びていたと思う、たぶん右手?、逆の手にはマイクを持ち歌い続けている)
②手首のスナップのみで撃つ(腕全体ではなくほぼ手首から先だけを動かすというこのスマートさたるや)
③女の子をキャーキャー言わせておいて、そのキャーッて言っている姿も見届けたであろう一瞬の間を置いてから背を向け去っていくその背中のかっこよさ(背中を向けられてからもまだ興奮収まらぬ女の子の状態も含めて)
全部ひっくるめて、もうパーフェクトにアイドル。
その姿はもう「二次元の人かな?」と思うくらいに偶像的で、最高にアイドルだった。
撃った瞬間の彼にポップなフォントで「BANG★」と添えても違和感はないし、むしろ添えたい。添えるべきだ。いや、添えなくてもアイドルの超越した力によって自然発生的に出現していた気さえしてきた。
どうか早急に井ノ原快彦の「BANG★」で動くLINEスタンプを作ってほしい。
百歩譲って動かないスタンプでもいい。使い所はわからないが無駄に乱打したい。
その所作は間違いなく正統派アイドルのそれで、照れたりお調子乗りなそぶりも見せずめちゃくちゃ自然にバーンしなすった。
かっこよすぎた。
Mステ出演時セットにミラーボールをふんだんに盛り込んでいるとなれば「六本木中からミラーボールを集めました」と言う。
その翌週のMステ、観客を入れてのステージで曲披露の時には「六本木中から女の子を集めたので、六本木の街には今男しかいません」みたいなことを言う。
ツアー大阪公演1日目には「大阪はノリが違うから汗の量が変わってくる、2リットルくらい変わるんじゃない?」と適当な調子のいいことを言う。
この日の公演では冒頭挨拶から「大阪ラストなんで力を出しきる、明日なんてどうだっていい!衣装ビリビリにしちゃおうぜ!!」というはしゃいだ発言から始まって、各場面でいろんな話題に乗っかっては調子のいいボケを挟み、その都度つっこまれては楽しげに大笑いしていた。
井ノ原節と表すにふさわしいその適当発言を聞くたびに私は「また始まった」とニヤニヤしたり「おいでなすった」とワクワクしたりする。軽く血が騒ぐ程度には井ノ原節が好きだ。
そういうおふざけな側面を持つ、というかそういう側面がわりと強めな人の繰り出すごく自然なファンサービスの所作に、完全に撃ち抜かれてしまった。
そんなギャップかっこいいに決まっているではないか。
たった数秒で完全に「アイドル・井ノ原快彦」の虜だ。自分が撃たれてもいないのにおこぼれでさえこの威力。アイドルってすごい。
井ノ原快彦の「バーン」は一見の価値ありどころではなかった。
やっぱりどう考えても早急に動くLINEスタンプにしてほしい。 何度も何度もタップして繰り返し再生したい。
いろいろなファンサ要求うちわがあるが、「バーンして」のすごいところはその一連の動きによって周辺一帯に「かっこいい」を充満させてしまうところなのかもしれない、と思った。
終演後、帰り支度をしている最中その女の子と目が合ったので思わず話しかけさせてもらった。
普段はあまり会場で周りの人に自分から話しかけないチキンなのだが、今回ばかりはどうしても「よかったですね!」と、おこぼれでかっこいい瞬間を見せてもらえた事への感謝を伝えたくなってしまった。
よかったですね、とか、すごかった!とか、最終的に完全に語彙力を失い「なんかこう…ウワアアアってなって!」と言ってしまった。
説明力のなさに自分でもびっくりした。
するとその女の子たち(2人組だった)の隣席のお姉さんが「かっこよかったですね!」と入ってこられて、全員で「ですよね!!」と頷きあった。
さらに女の子たちの後ろのお姉さんも「かっこよかった!」と入ってこられて、また「ですよね!!!」と頷きあった。
たぶんそうなのだろうとは思っていたが、彼女の周り全員がその場で感情を言語化し共有できたことでハッキリした。
彼女の周囲全員が、間違いなくあのバーン一発でもれなく撃ち抜かれていたのである。
たった数秒、たった一発の銃弾で辺り一面のおなごを「かっこいい!!!」と頷き合わせてしまう井ノ原くん最強にアイドル。かっこよすぎる。
かっこいいを何度言ってもまだまだかっこいいと言いたくなる。撃ち抜かれるってこういうことなのか、と実体験を持って理解した。
彼女たちのお隣にいたお姉さんは「(うちわの)裏面も見てもらった?」とやさしく話しかけていて、それに対して「はい、笑ってもらいました〜…」と答えていたのもかわいらしかった。そしてまた「すごい!」「よかったね〜!」と声がかかるこの空気。
井ノ原くんがバーンした跡地には平和な世界が広がっていた。
そして「こんな近くで芸能人見たの初めてです」とも言っていて、よくよく聞いてみれば今回が初めてのコンサートだったらしい。
おそるおそる年齢を聞いてみるとなんと14歳だった。
思わず「かわいい!」が口をついて出た。
14歳にとっては超大金であろう8300円のチケットを買って、うちわを一生懸命作って、アンコールでは周りの誰よりも大きな声を出していて、井ノ原さん以外のメンバーのことも「かっこよかった!」と喜んでいて、そんな風にV6を応援しているんだなあ、V6が好きなんだなあ…と思うと、その純粋さにうっかり涙が出そうだった。
コンサートのMCで登場した関西ジャニーズJr.に13歳の子がいて、井ノ原さんが「あれくらいの年齢の子を見るとなんか泣きそうになっちゃう」と言っていた。まさしくそれだ。
後から思い返せば、V6が目の前に現れた直後に真後ろから聞こえてきた「生きてる〜〜〜!!!」という驚きと感動に満ちた声もきっと彼女たちのものだったのだろう。私もあの距離感に圧倒されていたが、背後から耳に届いたその言葉に「わかる…」と口角を上げた。確かにV6は存在していた。生きていた。
それと、彼女が「銀テ持ってますか?」と確認してくれたことにも驚いた。
コンサート中に銀テープが飛ぶのはお決まりの演出だが、それを観客全員が必ずしもキャッチできるかといえばそうでもない。
ただ、V6ファンはそれを分け合う傾向にある。<→V6とファンと銀テープ >
それでも14歳の女の子がそこまで気が回せていたことに、私は正直、なんというか、ウワアアアってなった。
丁重に自分も取れたことを伝えたのだが内心ちょっと泣きそうだった。
井ノ原さんに「ここにいるあなたのファン、ものすごくまっすぐ育ってますよ…」と僭越ながらお伝えしたくなる。
それにしても、彼女のうちわの「快」面、「バーンして」面のどちらにも反応した井ノ原さんの心境を想像するとそれもまたほっこりする。
「14歳ではじめてコンサートに来た初々しい女の子に神ファンサをする井ノ原快彦」だけでも結構お腹いっぱいだ。
以上が私が今回目撃した極上のファンサ体験の一連である。
ファンサそのもののかっこよさはもちろんのこと、それを受けた女の子の初々しい可愛らしさ、そこに残った平和な空気もひっくるめて最高の体験だった。
彼女と話をしたのはほんのわずかな時間だったけれど、たぶん私はこの感覚をずっと覚えているのだろうな、となんとなく思っている。それくらい胸にぐっときた。
貴重な経験をさせていただき、井ノ原くんにも彼女にも周りの方々にも感謝である。
最後に、何度も何度も言っているにも関わらずまだまだ全然言い足りないので、どうかもう一度だけ言わせていただきたい。
井ノ原快彦の「バーン」は、ハチャメチャにかっこいい。
最高にアイドルだった。